サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

2017-08-10から1日間の記事一覧

詩作 「咆哮」

そのとき 不意に電車がとまり 私は世界の裂け目を 覗いたような気がした 普段と変わらぬ 午後の景色のなかに 変化が訪れた 線路は軋み 緊急の放送があらゆる場所で 白目をむいて 奏でられた 地球はいよいよ 終わりを迎えるのだろうか 電車の扉が開くまで時間…

詩作 「八月六日」

夏でした 地面には 陽炎が揺らぎ 私の自転車は じりじりと焼けて熱く 空は青く 何も過不足のない 輝くような夏の一日でした 空が不意に光り 熱い風が劇しい怒りのように 大地へ落下した 私はそのとき九つの少女で 私の自転車は買ってもらったばかりの 眩しい…

詩作 「悪意」

黄昏の校庭に 人影は乏しい 見捨てられた景色 見捨てられた時間 そして 見捨てられた私へ 熱いシャワーのように 降りそそぐ悪意 カッターナイフは スカートを切り裂く為のものではありません 絵の具は ブラウスを汚す為のものではありません 携帯のカメラは …

詩作 「苦しさの涯で」

テールランプが 紅くにじむ 喫茶店のガラスが 曇っている 待ち合わせの時刻の 少し前に プラットホームへ滑りこんだ電車の音が 天井を隔てて 伝わってくる わたしの胸は 予感にふるえる あなたの笑顔を 真新しいキャンバスに 美しく描きだす 逢いたいのは 虚…

詩作 「グレーゾーン」

夕闇は 音を立てない 無言で 一日の終わりの 疲弊のなかに 人々を佇ませる 昨夜 交わした約束は たちまち裏切られる 灰色の関係 灰色の距離 あなたは指折り数えている 幸福な未来が その小さな掌に 触れる瞬間までの 時間の長さ わたしは 一日の終わりの 疲…

詩作 「駅」

電車が 風を巻いてはしりこむ 線路からホームへ 舞い上がる冬の風と 人々のざわめき 夜は一目散に 闇へ溶けていく まだ帰りたくない まだ離したくない つないだ手を からめた指を まだ今は ほどきたくない 秒針が回る 黙々と 残酷に それまで他愛のない会話…

詩作 「しらない世界」

海原は 最果てをしらなかった どこまで 突き進んでも 終着駅は見つからない 明け方まで 浜辺で火を焚いて 酒を浴びていた 車座の男たちも 不意に遠い眼差しで 夜空を見上げた 北極星を 確かめるために あなたの本心が どの波間に揺れているのか 誰もしらない…

詩作 「秘密」

夜の闇に まぎれて すべて隠してしまいましょう 深夜の駅前の道を わたしもあなたも 靴音を殺して歩く 野良猫が 無数の敵意に身構えるように 露見することを おそれて わたしたちは綱渡りのように 夜の暗がりに爪先立つ 秘められた 感情が 少しずつ ビーカー…

詩作 「所有」

長雨に煙る空 遠くに光る ビルの赤いランプ 十一月の街は少しずつ冷えていく こころが少しずつ冷えるように 愛することと 支配することの間に 見いだせなくなった距離を 探し求めて 動く指先 誰かを所有すること 愛しいあなたを所有すること 所有することで …

詩作 「いいえ」

いいえ、それは星ではありません それは夏草の葉叢で生まれた若い蛍火 いいえ、それは風ではありません それは夕暮れの家路を歩くあなたが 一日の労働を終えた溜息の音 いいえ、それは答えではありません それは連綿と続く暮らしのなかで あなたへの関心をか…

根源的性質としての「弱さ」

以前、長谷川豊という人物が自身のブログに、人工透析患者に対する誹謗中傷の記事を投稿し、社会的な問題に発展したことがあった。彼の言い分は、医者の勧告を無視し、節制を怠って発病し、揚句の涯に人工透析を受けることになるのは患者としての罪悪だ、と…