サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

芸術・娯楽

「恋愛」の危険で純粋な形象 新海誠監督「君の名は。」をめぐる断想

幕張新都心のイオンシネマで、今更ながら「君の名は。」(新海誠監督)を観賞してきた。実に印象深く心に残った作品であったので、今更ながら感想を書き留めておきたい。 この作品は日本のみならず、国境を飛び越えて海外でも幅広く公開され、好評を博してい…

現実と幻想の抽象的接合 「千と千尋の神隠し」をめぐる断想

金曜ロードショーで、久々に宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」を再見する機会に恵まれた。改めて見直してみても、やはり「傑作だ」という素朴な感嘆と新鮮な興奮が生まれ、既に知り尽くしている筈の筋書きや一つ一つの場面さえ、少しも退屈な印象を齎さずに…

共感する歌は、広く届かないと、彼は言った

先日、NHKの「SWITCH」という興味深い番組で、映画監督の西川美和氏と、「いきものがかり」の水野良樹氏が対談していた。表題の「共感する歌は広く届かない」という発言は、水野氏のものである。 西川氏の「何故、自分たちの音楽活動がマス=大衆に…

「演歌」のメンタリティ

所謂「演歌」や「歌謡曲」という名称で扱われる邦楽には、男を支え、苦労を堪え忍ぶ健気な「女」というイメージが頻出する。女性の社会進出が叫ばれるようになって久しい昨今、そういうイメージが古臭く感じられるのは止むを得ない。しかも、そうした社会的…

「わたし」を隔てる境界線 細田守「おおかみこどもの雨と雪」

今日、久し振りに細田守監督の「おおかみこどもの雨と雪」という長篇アニメーションを途中まで見返した。封切りの時に劇場で鑑賞して以来なので、概ね四年振りだろうか。相変わらず、感想は変わらない。紛れもない傑作で、非常に美しいアニメーション作品だ…

成長の拒否ではなく、無効化 ゆうきまさみ「究極超人あ~る」

ゆうきまさみの傑作「究極超人あ~る」は、学園を舞台に据えたコメディであり、その意味では有り触れた類型の一部として回収されてしまうかもしれない。実際、この作品に詰め込まれている種々のマニアックな細部やユーモアは、爆笑に次ぐ爆笑を呼び覚ます為…

「プレステ」の時代と、私の追憶 2 「アストロノーカ」(1998年)

当時エニックスから発売された「アストロノーカ」を知ったのは、確か「ファミ通」がきっかけであったように記憶している。或いは「スターオーシャン・セカンドストーリー」に附属していた体験版が購入の契機であったかも知れない。何れにせよ、このゲームは…

少年は己の半身と対決する ル=グウィン「ゲド戦記」

アメリカの作家アーシュラ・K・ル=グウィンの「ゲド戦記」第一巻「影との戦い」のハードカバーを図書館で借りて読んだのが、幾つの時だったかはもう覚えていない。小学生時代の私は図書館へ通うのが日課のようなもので、ゲド戦記を手に取ったのは恐らく、…

海を走る電車

宮崎駿の「千と千尋の神隠し」に、千尋とカオナシが電車に乗って、海の上を渡っていくシーンがある。「風の帰る場所」(文春ジブリ文庫)という本の中で、宮崎駿はこのシーンのことを「作品の山場」と呼んでいるが、実際あれは物語の重要な転換点になってい…

豚のダンディズム、アドリア海の静寂

宮崎駿のインタビューを集めた「風の帰る場所」(文春ジブリ文庫)を読んでいたら、「紅の豚」に関するインタビューがあり、あの作品の中で描かれていた景色の断片が眼裏へ甦ってきた。 小さい頃から「ナウシカ」やら「ラピュタ」やら「トトロ」やらを繰り返…

植松伸夫「ザナルカンドにて」

植松伸夫の作曲した「ザナルカンドにて」は、極めて美しい旋律の曲だ。スクウェアから発売されたPS2のロールプレイングゲーム「FFX」の中で印象的に用いられたこの楽曲には、単なるゲームミュージックという枠組みを超越したクオリティが宿っている。…

組織の論理、個人の論理 映画「64」に関する覚書

大雨の降り頻る月曜日の朝から、幕張新都心のイオンシネマまで「64」の前篇と後篇を纏めて観覧する為に出掛けてきたので、作品の感想を書き留めておく。ネタバレを嫌う方は、作品の鑑賞後に読んで頂きたい。 横山秀夫の硬質な警察小説を下敷きに作り上げら…

「ドラえもん」の不気味な側面

現代に暮らす日本人の大半は「ドラえもん」を知っている。これは普通に考えて恐るべき真実だ。少子化が進み、出生率が低下の一途を辿り続けているとはいえ、日本列島には一億人を超える日本語話者が存在しており、その一億人以上の日本語話者の大半が知って…

基礎教養としての「ジブリ」映画

私が小さい頃、時代は未だVHSのビデオテープが全盛期で、DVDやBDは片鱗すら見当たらなかった。母親が二人の息子の為にせっせとダビング(この言葉も、今では余り耳にしない)してくれた様々なアニメーションが、幼少期の私にとっては大切な「教養」であった…

痛ましい愛情の形 椎名林檎「ギブス」

以前に「音楽」というカテゴリーを自ら設けておきながら、一向にそのジャンルに関する記事を作成してこなかったので、偶には趣向を変えて椎名林檎の楽曲に就いて書いてみる。 椎名林檎の「ギブス」が発表されたのは、確か私が中学生の頃で、その金属的な音色…

それは凡庸で退屈な感傷に過ぎないのだろうか? リュック・ベッソン監督「レオン」

私は熱心な映画愛好家ではなく、映画館に足を運んで二時間余りの沈黙に閉ざされた視聴に金を払う習慣とも、それほど親しい訳ではない。映画館へ足を運ぶ習慣が多少なりとも自分自身の生活サイクルに入り込むようになってきたのは、ここ数年間の話で、それも…

蒼いプライド、路地裏のヒロイズム BUMP OF CHICKEN 「K」

音楽について語ることは酷く難しい。それは言葉について言葉で語る文学論とは異質な、異次元の難しさである。音楽は確かに何らかの意味を宿し、それによって私たちの心身に訴えかける非言語的な力を宿している。だが、それを「言葉」に翻訳して語り切ること…

「プレステ」の時代と、私の追憶 1 「moon」(1997年)

私が小学生低学年だった頃、テレビゲームの世界は任天堂のスーファミ(スーパーファミコン)の全盛期だった。ドラゴンクエストやファイナルファンタジー、クロノトリガーといった国産RPGが爆発的なヒットを記録し、私たち小学生は夢中になって、電子的な…

「斃す」のではなく「隠れろ」 「メタルギアソリッド」の齎した革命をめぐって

長い間、私にとってゲームとは「敵を倒す」ことこそ正義であるような世界だった。次々に現れる敵を倒すべく、例えば「ぶちスライム」を延々と棍棒で殴り殺して経験値を溜め込んでいくような作業も、強くなる為だと思えば退屈でも堪えられたものだ。レベルが…

堆積する時間の中を生きていく 是枝裕和監督「海街diary」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 2016年、明けましておめでとうございます。 元旦を迎えたばかりの夜更けに徒然と、例によって勝手気ままな雑文を草したいと思います。 昨年、幾つか見た映画の中で一番印象的だったものはどれだろうと、先日何となく…

長崎に黒い雨が降る 山田洋次監督「母と暮せば」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 今夜は山田洋次監督の新作映画「母と暮せば」について書きます。 2015年は敗戦から70周年ということで、戦争に題材を取った映画やドラマ、ドキュメンタリーなどが目立つような気もします。この「母と暮せば」とい…

光と影の叙事詩 「ファイナルファンタジーⅦ」 3 ゲームに「思想」を見出せるとするならば

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 本日は以前に続き物として書き出しておきながら、そのまま完結させずに放置していた記事の続きをアップしようと思います。 saladboze.hatenablog.com saladboze.hatenablog.com 「ファイナルファンタジーⅦ」という作品は…

「レイシズム」という宗教 映画「杉原千畝 スギハラチウネ」をめぐって 2

どうもこんにちは、サラダ坊主です。 先日アップしたエントリーの続きを書こうと思います。 saladboze.hatenablog.com ヘブライ人の民族的共同体における宗教的信仰として形成されたと思しきユダヤ教は、ナザレのイエスという革命的な改革者によってキリスト…

「レイシズム」という宗教 映画「杉原千畝 スギハラチウネ」をめぐって 1

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 先日、船橋のららぽーとで最近公開された唐沢寿明主演の映画「杉原千畝 スギハラチウネ」を鑑賞してまいりました。第二次世界大戦中の東欧リトアニアを舞台に、ナチスドイツから民族浄化の対象に選ばれ、行き場を失った…

「同胞」という快楽 「幻想水滸伝Ⅱ」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 本日は久しぶりにテレビゲームについての記事を書きます。 コナミから1998年12月に発売されたプレイステーション用RPG「幻想水滸伝Ⅱ」は、私が今まで楽しんできたゲームの中でも五本の指に入る名作です。 架空…

幽閉された「悪意」の増殖 映画「ソロモンの偽証」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 本日は、これも若干旧聞に属する作品ですが、映画「ソロモンの偽証」について思うところを述べたいと思います。 この作品は宮部みゆきの小説を原作としており、劇場用実写映画は「前篇・事件」と「後篇・裁判」の二部作…

表現の自由という、名状し難い「困難」 映画「図書館戦争 -THE LAST MISSION-」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 本日は、やや旧聞に属するテーマかも知れませんが、10月10日に公開されて大ヒットを記録している実写映画「図書館戦争」の続編について書きたいと思います。 内容としては前作同様、有川浩の原作小説から大きく逸脱…

「幽霊」の政治学 映画「桐島、部活やめるってよ」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 今夜は2011年に公開された映画「桐島、部活やめるってよ」について書きます。 この作品は元々、朝井リョウの書いた小説が原作ですが、映画化された作品は原作のニュアンスを残しつつも、遥かに上質な芸術作品へ昇華…

暴力と哀傷 北野武「HANAーBI」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 長い間更新を怠っておりました。申し訳ありません。 今日は北野武監督の「HANA-BI」という映画について書きます。 御存知の通り、北野監督はツービートという漫才コンビから出発して、今では世界的な映画監督の一…

「森」の論理と「ヒト」の論理 宮崎駿「もののけ姫」

どうも皆様こんにちは。サラダ坊主です。 日本が誇るアニメーションクリエーターとして国際的な知名度を持つ宮崎駿氏が「風立ちぬ」を最後に現役を退いてから、早くも2年以上の月日が流れました。 「となりのトトロ」や「魔女の宅急便」という牧歌的な作品…