あなたが遠くを眺めるとき
青い焔のような海が揺れる
あなたが瞼を閉ざすとき
紅い夕闇が静かに迫る
あなたが声を立てて笑うとき
強張っていた世界が溶ける
あなたが怒りに身を任すとき
張り巡らされた嘘が 焼け落ちる
あなたが眠れぬ夜を過ごすとき
わたしは哀しみに指先で触れる
あなたがそれを絶望と呼ぶとき
わたしは慰めの言葉に迷う
あなたが まだ傍にいた頃
日々は明るい歌に満ちた
あなたが優しく微笑むとき
頬を撫でる風は幸せに似ていた
あなたがこうしていなくなった後も
日々 この街を訪れる
黄昏の沈黙
背の高いビルが
百年前の墓標に見える
不意に
あなたの後ろ姿が
記憶の涯で 風に吹かれた