サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

詩作 「カッターナイフ」

それは無駄な

悪あがきというやつで

私はいつまでも

携帯が青く光るのを

唇をかんで待っている

鳴らない電話に

不意に光りと音が

よみがえるのを

私は平凡な生活の

様々な場面で待っている

あきらめられない魂が

この胸の奥に

いつまでも熱い光りをたたえている

 

あらゆる恋は錯覚から始まりやがて終わる

温度が急激に下がっていくときの

物哀しい音階を 私は忘れたことがない

ピアニッシモからフォルテッシモへ

心臓の音が

やみくもに高鳴っていく

顫えることを忘れた携帯電話

私は故障を疑ってみるが

それは春に買い替えたばかりで

艶やかに輝いている

 

その錯覚があまりに甘美であるために

私たちは道を踏み誤り

奈落へ足を滑らせる

風の強い一日

つないでいた指先がほどけるように

心と心の剥離が起きた

そして視界はふさがれる

漆黒の闇が

私の心に冷たい蔽いをかける