サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

年の瀬雑感 2017

 今年もぐんぐんと暮れていく。始まる前は果てしない地獄の回廊に思われたクリスマス商戦も、過ぎ去ってみれば一瞬の閃光のように儚い記憶である。昨年は金土日の三連休、今年は25日が平日ということで、売上の推移には変動があった。尤も、カレンダーの変わらない年は存在しない訳だから、そういう変動は例年の慣習であり、一喜一憂には値しない平凡な事柄である。

 毎日始発の京成電車に揺られ、夜明け前の街へ漕ぎ出していく。寒さに身を竦め、首の周りに妻から貰った黒いネックウォーマーを巻きつけて厳重に武装し、眠い眼と重たい躰を相棒に、職場までの道程を急ぐ。肉屋もケーキ屋も、この季節は命懸けの戦場暮らしだ。早朝から凄まじい物量の荷物が、薄暗い百貨店の館内へ担ぎ込まれ、積み上げられていく。

 クリスマスは、一般的には家族や友人と共に分かち合う、豊かで寛いだ時間であろうと思う。実際、そうでなければ、こんなに小売の現場が繁忙を極める筈もないのだ。そして、私たちにとっては(つまり、私の所属する世界では)、クリスマスは紛れもない「戦争」の季節である。「地獄の季節」と言い換えても差し支えない。一瞬の油断が致命的な惨事に発展しかねない。僅かな判断の遅れが、幾何級数的に問題を増幅させる。そういう戦場の指揮官として、緊迫した舵取りを担うことは、無論、強烈な疲弊を齎すが、それと隣り合わせの高揚の快楽も忘れ難い。結局、私は、年末の戦場の光景を愛しているのだ。そして明日から、いよいよ大詰めの戦闘が幕を開ける次第である。今にも硝煙の香りが鼻を衝きそうな、そういう刻限である。