サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

詩作 「SCORPIO」

毒針で刺すぞ

痛みは激しいぞ

動けなくなって

白骨になっちまうぞ

裏切りは許さないぞ

愛されるということは

感情の債務をしょいこむということだ

お前は俺に借りがあるはずだ

借りたものはかならず返せと

親や世間から習ったはずだよな?

 

お前のために俺は様々な犠牲を支払ってきた

経済的にも性的にも時間的にも

それなのにお前は別の男と仲良くやりたいというのか

他の男の腕に抱かれることで幸せになれるというのか

それは傲慢な考えだ

それは借金の踏み倒しだ

俺に債権を放棄するつもりはない

投資は回収されねばならない

どうしても払えないと強弁するならば

差し押さえもやむをえまい

他人に愛を注ぐひまがあったら

俺への債務を履行したらどうなんだ

愛のデフォルトは最低の行為だぞ

お前は背徳的な女だ

堅気のふりをした冷淡な娼婦だ

 

十一月に生まれた私の心は

醜い蠍の形をしていた

それがあなたを打ちのめし

引きずりまわし

徹底的に痛めつけた

それを理解するまで

時間が必要だった

私は思い返す

あのころの自分の病的な幼さを

そこから今も

ほんとうに逃れられたのか

絶えず問いかけなければならないほどの

根深い病巣を

 

愛することが歯車を狂わせる

絶対的な所有へのあこがれが

火箸のように背中をはげしく打つ

もう訳が分からなくなるんです

けっきょくのところ

自分が何を求めているのかさえ

「好き」という感情の定義さえ

なぜこの私を受け止めてくれないのですか?

縋るような問いにあなたが見せた

沈黙の意味も

今なら漸く

落ち着いて味わえるかもしれません

 

私の巨大な愛は

巨大な報酬を常に求めていた

その欲望の劇しさが

あなたを疲弊させたのだ

それは蠍の毒に似ていた

相手を動けなくさせる

歪んだ悪意に満ちていた

 

夜の砂漠で

私はかたいブーツの底で

逃げ回る蠍を一匹

踏み潰して殺した

蠍は静かにちぎれて果てた

私は私の闇をのぞいた