サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

2016-05-23から1日間の記事一覧

「正しい意見」よりも「自分の意見」を語ることの倫理性

こうしてブログに投稿する記事に限らず、何らかの事物に関して私見を書き綴るとき、決して高慢に思い上がっている訳でもないのに、知らず知らず私は「自分の意見」よりも「正しい意見」を書き連ねようと試みている己に気付くことがある。無論、ブログの記事…

夏目漱石とハーマン・メルヴィル(小説の過剰な「饒舌さ」が抵抗するもの)

最近、19世紀アメリカの作家メルヴィルの「白鯨」(岩波文庫・八木敏雄訳)を少しずつ読んでいる。無学な私は原語では読めないので、精確なことは判断しかねるのだが、この翻訳はとても活き活きしていて、原文の息吹を忠実に、生々しく読者に伝える為に極…

海外文学の異郷性

「異郷性」という言葉は、恐らく世間一般に流通している日本語の辞書の中には記載されていない単語である。何故なら、私がこの文章を著すに当たって適当に拵えた造語であるからだ。造語と呼べるほど画期的な意味の豊かさを備えている訳ではないが、一般的な…

近未来・スチームパンク・異なるものを結び合わせること

所謂「SF」というジャンルに関する私の知識は極めて貧相な代物である。ウェルズ、ブラッドベリ、ハインライン、アシモフ、クラーク、ヴォネガットといった御歴々の輝かしい名声だけは聞き齧ったことがあるが、その実作に触れた経験は殆ど皆無と言って差し支…

「根本的解決」というラディカルな教義

仕事をしていても、或いは世間を騒然とさせる深刻で猟奇的な事件に関しても、この国の行く末を左右しかねない重大な社会的問題に関しても、問題を解決する場合には「抜本的な対策」という魔術めいた代物が要求されるのは、世の習いである。上っ面の部分だけ…

「小説家」という特殊な実存の形態(ル=グウィンの随筆に導かれて)

先日、アメリカの有名な小説家アーシュラ・K・ル=グウィンの随筆集(評論集?)である「夜の言葉」(岩波現代文庫)を読んでいたら、次のような文章と邂逅した。 ところで、ある小説作品中にミセス・ブラウンが存在するかしないかを測るのに、きわめて有効…