サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

2016-10-09から1日間の記事一覧

詩作 「居心地」

そりゃあ重要ですよ 居心地は 家具屋の店員みたいに 男は言った 去っていった女の 猫背のシルエットが 眼裏で笑いさざめく 居心地が悪くて 家を出た女の 行方を尋ねる気力は もうどこにも残っていない 居心地を良くするための努力を あなたは怠っていたんで…

詩作 「さよなら、渚」

潮風が遠くから 帆を立てて近づいてくる 砂浜に白く煙る複数形の記憶、男女 波打ち際の静かな日かげで 手を振りました けんめいに もう最後だし 夏は 急速に終わりを迎える 陽炎がアスファルトに揺れて 買ったばかりのアイスキャンディが 汗ばんで溶けて 水…

詩作 「わかれる」

爪を立てて 引っ掻いたように いつまでも消えない幾つかの傷 血の滲む 夕映えの空の下 わたしもあなたも暮れていく道の上に佇んでいました 影法師が長くのびていく その音が聞こえそうで 耳を澄ましてみたら あなたの心は 別れることしか望んでいなかった さ…

詩作 「すべて壊れてしまいました」

すべて壊れて しまいました 嘗て確かにそこにあると信じられたものたち ときを選ばず 息衝いていた様々な感情の雫が 知らぬ間に乾き切っていました あなたの笑顔の写真が ひび割れ 古びていきます 時の暴力に わたしもあなたも逆らえない 時計の針が ゆっく…

詩作 「あなたが」

あなたが遠くを眺めるとき 青い焔のような海が揺れる あなたが瞼を閉ざすとき 紅い夕闇が静かに迫る あなたが声を立てて笑うとき 強張っていた世界が溶ける あなたが怒りに身を任すとき 張り巡らされた嘘が 焼け落ちる あなたが眠れぬ夜を過ごすとき わたし…

詩歌という経験

私が初めて詩歌らしきものを書いたのは、小学校の国語の授業で詩を書くという課題を与えられたときであり、ノートに幾つも詩を書いて教室で発表することに名状し難い愉悦を感じたことを、今でも懐かしく思い出せる。無論、今から振り返れば随分と稚拙なもの…