サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

2019-09-11から1日間の記事一覧

Cahier(恋情の力学・論客の実存)

*引き続き、バンジャマン・コンスタンの高名な恋愛小説『アドルフ』(光文社古典新訳文庫)を読んでいる。恋心という感情の力学的な構造を鮮明に描き出すコンスタンの筆致は、性急なほどに簡明で合理的である。この作品に備わった、身も蓋もない冷徹な大人…

詩作 「祝詞」

今日は はじまりの一日 あふれる光とながれる風のなかで 空は透き通るように青く眩しい 私たちはこの場所に誓いのことばを刻みます 祈りが天に届くように 願いが世界を動かすように 今日は はじまりの一日 遠い日のあらゆる過ちを押し流して 優しい夢の揺籃…

詩作 「WORKING BLUES」

夜明け前に目覚めて 暗い商店街を駆けぬけ 始発の電車に飛び乗る ぼやけた視界に手を伸ばして 無意識に着替えたら くたびれたライブティーシャツだったけど気にしない どうせ今日も一日仕事 朝から晩まで東京駅のあなぐらで いらっしゃいませいらっしゃいま…

詩作 「はじまりの歌」

長い間 暗がりをさまよっていた どんな光も滲んで見えた 私たちの衰えた情熱 私たちの老いさらばえた理性 長い時間が過ぎていったあとの 沙漠で私たちは はじまりの合図を待っていた 何の? 自ら踏み締める一歩の深さ そこからはじめる以外に方法はないのに …

詩作 「日向へ」

光の射す場所へ 手をつないで走ろう 息を切らして 夢を見るように 僕たちは光の射す場所へ急ぐ 苦い日々が カレンダーを端から端まで染めている さあ つないだ手を強く握り返そう ここは生きるには暗く寒すぎる だから 新しい世界へ飛び立つんだ 終わりを迎…

詩作 「手当たり次第」

手を伸ばして 当たるを幸い 女を口説く そんなあいつに 君は見蕩れるのか 金歯がいくつもはまった虫歯野郎だ 相手にするだけ時間の無駄さ キスする度に腐臭がするぜ だけど君は聞いちゃいない 走り出したら止まらないんだ そういうものだからしょうがない 好…

詩作 「はぐれる」

闇が来る前に いろいろと蓋をする 覗き込まれないように 人間は醜く その空洞は 覗き込めば腐臭が匂う 古びた記憶をさぐりあうのはやめておこう 聖域に触れた指は 毒を浴びたように黒く枯れる 封蝋が乾いて 開けてはならない扉を隠す 光のあふれる街角に こ…

詩作 「声が嗄れるまで」

伸び上がった背中に 指先でそっと触れた 振り返る前に 慌てて考える言い訳 どんな答えも一枚めくれば 言い訳と劣情に濡れている なんだよと向けられた瞳に 水たまりが映っている気がした あふれんばかりの 哀しみが鏤められた水たまり あなたは遠くへ 靴音も…