サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

2019-10-30から1日間の記事一覧

詩作 「限りある者たち」

静けさの裏側にひそむ いくつかの しょうのない罪 それを重ねて 裏返して 火を点けたのだ 君たちはまだ何も学ばず それでも餓えることには熱心だ 先生は教卓の向こう側で 世界の落日をながめていた わたしたちの小さな背中には まるい肩胛骨が艶めいているば…

詩作 「とおとうみ」

遠い海から 吸い込まれるように この船縁へ 辿り着いた影 あなたは なかなか笑わなかった 古代の魚類のような面貌 世界史から 忘れ去られた 一幅の絵画 記念写真を 撮りましょうよ 忘れ難い夏の一日のために この束の間の閃光さえ 明日には朧げな記憶に変わ…

詩作 「魔法陣」

描かれたものは 黒い夢の続き なごり 静かにえぐられていく心臓の鼓動 その音の終わり 靴音を響かせて 暗黒街を往く 牙の伸びた犬の群れ 俺たちはいつも絡み合って転げまわる 毒蛇が門柱に縋りつき 東の空から 月が高速で落下する 俺たちはいつも絡み合って…

詩作 「ためらいがちに」

いつから 気づいたのでしょうか ずっと忘れていた とまどい 微かに記憶しています こういう風に 心を騒めかせる瞬間があることを ためらいがちに 名前を呼びます ぼんやりと眺めていた水槽の向こうに 細くてきれいな月が昇っていた 若気の至りという言葉が …

詩作 「ひび割れて」

ひび割れた空に 白く伸びる飛行機雲 雲の割れ目に 指を這わせて 望遠レンズを 覗いたような恋をしよう 音を立てて 騒がしい街角で 青く澄み渡った夏空の下で 音楽が聞こえる 懐かしい歌 懐かしい夢 なかなか届かないものは 思い出 感情 あるいはその輪郭 切…