厚かましく不敵であること、それは往々にして集団の調和を擾す悪しき性質であると目されるものだが、どんな悪徳も、適切な分量と用法を守れば思わぬ画期的な効能を発揮することがあるのは、経験的に知られた地上の真理である。椿の豪胆な自己顕示は、辰彦の…
三島由紀夫の短篇小説「果実」(『鍵のかかる部屋』新潮文庫)に就いて書く。 同性愛の女性カップルの悲惨な末期を描いた「果実」は、その全篇が不穏な臭気に覆われている。初期の作品とは異なる稠密で無駄のない硬質な文体は、三島の作家的成熟を濃密に実感…
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