サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

2020-07-27から1日間の記事一覧

「Hopeless Case」 25

小説だって現実だ。椿の断固たる確信に支えられた言葉は、辰彦のスマートな理性を聊か混乱させた。実際、そのように考えることが出来なければ、衰燈舎が手掛けている類の、とてもマイナーで癖の強い外国の小説を翻訳して高価な造本で国内に頒布するという重…

「Hopeless Case」 24

季節は矢のように駆け巡った。夏季休業が終わると、椿が衰燈舎を訪れる機会は自ずと減った。内定は学士の肩書を前提としていたから、彼女は卒業証書を確実に勝ち得る必要があった。必ずしも勤勉な学生とは言い難い椿は、普通の四年生に比べて取りこぼしてい…