サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

社会・政治・経済

冤罪弁護士

先日、NHKで「冤罪弁護士」として知られる今村核氏に関するドキュメンタリーが放送されていた。番組の優れた出来栄えも然ることながら、何と言っても今村氏の独特なキャラクター、或いは生き方と、日本の刑事裁判が抱えている現状の問題点が興味深く、法…

「歴史」は「未来」を証明する

古文書や絵巻物といった歴史的遺産には、当時の人々の暮らしや習俗、思想や信仰が断片的に刻みつけられている。それらの古びた世界の「常識」は、現代に暮らす私たちの信奉する凡庸な「常識」とは随分、隔たっているように見える。同じ土地に住み、同じ人類…

詩を書いても何にもならない

また、思い立って詩を書いている。そういう根拠の不確かな思いつきに衝き動かされるのは、私の人生における根本的な慣習である。 詩なんか書いても仕方ない、という想いは昔からあった。そもそも、詩歌というものには、世間的な需要が殆どない。或いは、そう…

「自由」の重圧に堪えかねて

私が生まれ育った社宅には、それなりに大きなベージュの本棚があって、それは今も両親が終の栖として定年後に購入した東松戸のマンションの和室に聳え立っている。母親の本は、料理や裁縫に関する書籍や雑誌が大半を占め、他にはフランス語の小さな辞書、そ…

結局、誰もが「ドナルド・トランプ」ではないのか?

連日、アメリカ大統領選挙の衝撃的な結末に関する報道が、ネットやテレビを賑わしている。傲慢で明け透けな「レイシスト」のドナルド・トランプに、アメリカの良識は屈したのだろうか? バラク・オバマ、ヒラリー・クリントンの描いてみせた「希望」は所詮、…

食べることは、どんどん抽象化されていく

私は仕事でサラダを中心とした所謂「惣菜」を取り扱っている。こういう業種は世間では「中食」と呼ばれていて、レストランなどの「外食」と、家庭で料理を作って食べる「内食」との中間に位置するものとして分類されている。 大昔ならば、家族の食事は家でお…

売上の根底には「信用」が横たわっている

小売業の店長という立場は、日々の売上予算を追い掛けることに仕事の重点が置かれる。サービスの良し悪し、商品の良し悪しは固より大事な要素だが、幾ら壮麗な経営理念を公言してみたところで、実際に数字を出せなければ販売部の任務を成し遂げたことにはな…

「儲からないことをやるのは罪である」という呪縛

私は小売業の店長で、現場で日々、収益の追求に明け暮れている。それは私の所属する組織が「企業」であるからで、この苛酷な資本主義社会においては、利潤の追求は常に至上命題である。別に銭金を儲けることだけを念頭に置いている訳ではなく、大前提として…

個性的である為には、「自分」というコンテンツを再発見するしかない

どうやら風邪を引いてしまったらしく、体調が芳しくないので、余り入り組んだ記事は書けそうにもない。思い浮かんだことを漠然と綴って、パソコンの画面に待ち針で縫い留めておきたい。 ブログでも小説でも、或いはもっと日常的な次元で、仕事や家事、諸々の…

ブログは作品ではなく、コミュニケーションである

インターネットに象徴される通信技術の爆発的な進歩が、多くの無名の素人の自己表現を強力に後押しする起爆剤として作用していることは、明瞭な事実であると思う。インターネットの契約さえ結んでしまえば、それほど大きな経済的負担も背負わずに、自分の作…

「出来ない理由を探すな」というイデオロギー

仕事をしていると、色々な意見に遭遇する。銘々の個性を備えた人間同士が、様々な見地から自分の持論を述べ合うのだから、それらの多彩な見解が相互に矛盾したり、或いは適当な次元で折れ合い、馴れ合ったりするのも、日常茶飯事になるのは避け難い。だから…

商売の根本は「売れないこと」である

私は二十歳の時からずっと小売業の現場で食品を取り扱って飯を食ってきた。けれど、そうやって商売で給与を稼いで家族を養ったり家を買ったり、その他様々の雑多な支出に金を費やしたり出来るのは、つまり曲がりなりにも私が商売人としての渡世を営んでいら…

「背広組」と「制服組」

学生時代の友人に、自衛官になりたいと考えている男がいた。同じ大学に通いながら、彼は勉強し直して防衛大学校を受験したいと夢を語っていた。結局、その友人は自衛官の途には進まず、卒業と同時に地元の福島へ帰って新聞社へ勤めるようになった。昨年辺り…

人間の尊厳と、労働の内実と

私は十年前に今の会社へ入り、特に適性があるとも思えないまま、それでも続けるうちに技倆も上がり、経験も積み上がり、信頼も少しずつ得られるようになって、未だに居座り続けている。先月の頭から本格的に転職活動を始め、最終的には頓挫してしまったが、…

「現場主義」という魔法の言葉

小売業界に限らず、店舗と本部、支店と本店、工場と本社といった組織の区分は、企業の体制としては珍しいものではない。いや、企業だけに留まらず、どんな組織でも、実際に活動する拠点と、各地に点在する拠点を統括する中枢的存在というのは、一定の規模を…

社会と直接つながる生き方はできないだろうか?

前回の記事に通じる内容を書く。 saladboze.hatenablog.com 大学を卒業し、企業などの法人に就職して、与えられた役割を全うすることで生活の保障を得る。こうした仕組みは、私たちの暮らす社会においては極めて強固で堅牢な「型枠」として存在し、機能して…

理解しがたいものへの不寛容 / 「多様性」をめぐって

どうも今晩は、サラダ坊主です。 人間にはそれぞれ、個性というものがあります。無論、遺伝子の配列によって予め定められた生体的な宿命であるとか、或いはそもそも人間という霊長類の一種が集合的に備えている特質であるとか、そういった先験的な条件によっ…

「ゆるキャラ」と八百万の神々

現代の日本には夥しい数の「ゆるキャラ」が存在しており、日々増殖の一途を辿り続けている。私がその片隅に三年ほど暮らしていた船橋市には「ふなっしー」という屈指の有名ゆるキャラが棲息していて、世間には熱狂的な愛好家も少なからず存在しているらしい。…

要するに「被投性」

私は難しい哲学的語彙など分からない。だが、ドイツの哲学者ハイデガーが「被投性」という特殊な造語を用いたという歴史的な事実については聞き齧った覚えがある。無論、その精確な定義を理解した上で今、この言葉をパソコンの電子的な画面上に出現させた訳…

「叱責」に就いて

誰でも食う為には働かねばならず、働く以上はその作業なり行為なりが他人の為に、社会の為に役立っていなければならず、少なくとも顧客や上長や同僚や後輩から必要な存在であると公的に承認されねばならない。これはどんな業種でも職種でも決して避けて通る…

「日本的なもの」とは何か

日本的であるということ、日本という国家、社会、風土に固有の特質を表現するということ、それは日本人であり、日本語で思考することしか出来ない私のような島国の保守派には自明の行為であるように見える。わざわざ意識的な努力を積み重ねずとも、普通に暮…

「チームワーク」に就いて

私は今三十歳で、今年の冬には三十一歳になる。大学を一年で中退し、順序を違えた慌ただしい結婚の末に、妻子を養わねばならないという重厚な責任を負った為に、二十歳の時から社会に出て勤人としての日々を送ってきた。何の取り柄もない凡庸な男で、仕事は…

「結婚」願望の若年化(共同体への帰属を求める欲望)

地縁や血縁という問題は、近代化や都市化、情報化が亢進するに連れて意義を失い、薄れていくという考え方は、一見すると尤もらしい。それは近代的な個我の確立のプロセスであり、外在的な規制に縛られることなく、あるべき理想を追求する進取的な生存の形態…

核軍縮への困難な道程(テクノロジーの暴政)

昨日、アメリカのバラク・オバマ大統領が広島の平和記念公園を訪れ、原爆投下によって惨たらしい死を遂げた人々を追悼する内容の演説を行なった。現職の合衆国大統領が広島を訪問するのは史上初めての出来事であり、メディアでも大々的に取り上げられ、諸外…

「根本的解決」というラディカルな教義

仕事をしていても、或いは世間を騒然とさせる深刻で猟奇的な事件に関しても、この国の行く末を左右しかねない重大な社会的問題に関しても、問題を解決する場合には「抜本的な対策」という魔術めいた代物が要求されるのは、世の習いである。上っ面の部分だけ…

「イノベーション主義」への反発(報われることのない愚痴)

ネットに流布する西洋占星術の断片的な情報を徴する限り、私は太陽が蠍座、月が獅子座で、個人のパーソナリティを構成する最も重要なサインが二つとも「不動宮」(Fixed Sign)に属するという筋金入りの頑固者である。子供の頃から癇が強くて強情な気質であ…

「分かり易さ」の功罪(最大公約数の理解力)

分かり易いということ、理解するのに努力を要さないということ、それらの啓蒙主義的な価値観は、私たちの暮らす世界では、節操を欠くほどに猖獗を極めている。その最たるものは、例えば広告収入を当て込んで製作される民放のテレビ番組で、ちょっとでも視聴…

「制御し得る暴力」という妄説について 2

先日の記事の続きを書く。 saladboze.hatenablog.com 暴力、それも国家によって独占的に管理された合法的な暴力としての「軍事力」の行使が、様々な歴史的反省を踏まえて、諸々の規律に厳しく締め上げられ、自由や放埓と無縁の委縮の中に閉じ込められている…

「制御し得る暴力」という妄説について 1

先ほどテレビのニュースを見るまで知らなかったが、昨年来、日本の政治と社会を揺さ振り続けてきた安全保障関連法案が本日、施行されたらしい。 とはいえ、私はそれらの所謂「安保法」が具体的にどのような中身を持つものなのか、それが施行されることによっ…

運命論の効用について

物事には必ず原因と結果があり、その関係性を正しく緻密に把握することが出来れば、或る条件を入力することで常に同一の結果を出力することが可能である。 このような自然科学的な発想の形式が、明治以来の慌ただしい近代化を遂げた私たちの国家においても自…