サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

詩作 「除籍謄本」

去りぎわに

振り返る

この世界には

知らぬ間に

手遅れになってしまうものが多すぎる

消印のついた古い葉書

あなたの名が書類から除かれる

つないだ手が ほどかれるように

 

悲しみは

冷めていく

この夕暮れ時

気がつけば あの頃の苦しみは

古井戸のように涸れている

まぶしい嘘のように

共に暮らした日々の痕跡が色褪せる

雨宿りをしていた二人が

陽射しのなかへ

わかれていくように

 

はじめから間違いだったと

思ってみても

はじめの場所に戻れるわけではない

はじめから間違いだったと

思い知っても

はじめの場所を避けられるはずもない

 

長い長い交通事故のような暮らし

その記録は永遠に残りつづける

役所の暗い

倉庫にねむる

あなたの除籍を示す謄本