サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

詩作 「グレーゾーン」

夕闇は

音を立てない

無言で

一日の終わりの

疲弊のなかに

人々を佇ませる

昨夜

交わした約束は

たちまち裏切られる

灰色の関係

灰色の距離

あなたは指折り数えている

幸福な未来が

その小さな掌に

触れる瞬間までの

時間の長さ

 

わたしは

一日の終わりの

疲弊のなかで

あなたから送られた

短いメールを繰り返し読む

不安が

わたしたちの関係を急き立てるのならば

いずれ途方もない

巨大な不幸が

わたしたちを兵隊のように

取り囲むだろう

銃声が

緩慢にひびく

世界は

徐々に骨折しつつある

あなたは

切なさを浮かべた顔で

静かに重ねようとする

想いを

光りを

つながりあった

肉体の温度を

 

愛するという

行為の意味を

言葉の中身を

見つめようとして

見つめきれない

ざらついた

孤独が

十二月の冷え切った夜の隙間に

モルタルのように

塗りこまれている

わたしたちは

墓標のように佇んで

見えない未来に

あこがれる

高速道路の陸橋が

夜の空に浮かび

都市の中心へ伸びている

あなたは

口数を減らして

わたしの手を握る

言葉にならないもの

言葉では足りないものに

封じられて

風車のように

寒々しい都会の日々を生き急ぐ

灰色の

ふたり