サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

詩作 「苦しさの涯で」

テールランプが

紅くにじむ

茶店のガラスが

曇っている

待ち合わせの時刻の

少し前に

プラットホームへ滑りこんだ電車の音が

天井を隔てて

伝わってくる

わたしの胸は

予感にふるえる

あなたの笑顔を

真新しいキャンバスに

美しく描きだす

 

逢いたいのは

虚しさの反動ではないのか

淋しさの

埋め合わせではないのか

今この瞬間の

カタチの定まらない感情を

なんと呼べばいいのか

それでも

明るく華やかな

あなたの笑顔を見れば

複雑な思考は忘れ去られる

誰も通らない

田舎の自動車道の

中央分離帯のように

忘れ去られる

 

声が聞こえない

時間がうまく流れない

あなたのもどかしい舌先

柔らかくあたためられた唇

抱き寄せる瞬間に香る

甘さと

せつなさ

砂糖をいれない紅茶の苦みが

あなたの美しさを

際立たせる

逢いたかったという言葉は

表明でもあり

確認でもある

わたしは笑顔でうなずく

あなたの繊細な不安に

よけいな亀裂を

走らせぬように