サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

詩作 「すれちがい」

その言葉には

多彩な意味が織り込まれている

プラスマイナス

刻一刻と入れ替わるオセロのような磁石

睦み合う二人のあいだで

徐々に腐蝕していく絆のことを

すれちがいと呼ぶこともある

忌まわしい呪文のように

別れ話の終止符に添えられる言葉

すれちがいが原因で

この恋は終わりました

ヘリウムのつまった風船に向かって

思い切り振り下ろされた錐のような哀しみ

 

その言葉は

豊饒な果実のように

私たちの行く手にぶらさがっている

遠い日にさよならを決めた懐かしい女の子が

改札を抜ける私と

反対の方角に歩いていく

そうやって郷愁のようにすれちがうことが

運命の車輪をひとつ回す

彼女は足早に自分の人生に向かって歩いていく

私の人生との

束の間の交錯を忘れて

 

重ならない想いが二つ

溝に足をとられるように

伸ばした指先は虚空をさまよい

まなざしは振り切られる

もう一度

輪郭を確かめたい

あなたの強いまなざしを

このカラダに深々と浴びたい

 

平行線は交わらないという公理を

歪めるような本物の愛で

この星の常識に

亀裂を走らせる

かつて重なることを諦めた二つの心が

金環日食のように

この世界を驚嘆させる