サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

詩作 「うわべ」

うわべを重んじないのは愚か者です

人間は表面で出来ています

だから皆

スキンケアにあれほど必死なんでしょう

潤んだ瞳が

誠実な言葉を簡単に踏み越える夜だってあるでしょう

その睫毛も眉毛も芸術的に加工されていますよね

表面は大切です

テレビなんて表面が死んだら終わりですから

 

見つめることに

誰しも夢中になるのは

うわべの向こうに惹かれるからでしょうか

裏を探れば

何か確かなものが見つかると思い込むのでしょうか

そこには何の保証もないのに


それでも私は踏み込まずにいられない

そこが閉ざされた聖域であると知っていても

痺れるような渇きに締めつけられて

見つめ合うだろう

望みを叶えるために


恋することを禁じても

誰かの踏んだアクセル

追い越し車線を走りつづける銀色の外車

貴方を眠らせる首都高のトンネル

うわべだけでは満たされないのに

私たちはいつも

うわべに魅せられる

静かなピアノの独奏が

ステレオから漏れる

橙色の光に包まれて

貴方の本音が急に遠ざかる

いつからでしょうか

こんなにも言葉がその心に響かなくなったのは


同じ声で

同じ科白を口にしても

届かない夜がある

それは切実な痛みだ

こんな夜を迎えるために

これまでの日々を重ねたのだろうかと問う

それは愚問ですと神様が雲の上でつぶやく

光りかがやく大都会の夜景にむかって

神様は笛の音を響かせる

ねむりなさい、子どもたちよ

辛くてたまらない夜は

早く眠ってしまうに限る

この夜を越えた先には

新しい朝が待っていると

自分自身を説得しなさい