孤独な明け方の光
暁の街で
夜から脱け出した黒猫の影
天球儀の奥底で
二人は巡り逢いました
なにかの間違いのように
触れ合った袖口
宿命という言葉を
古びた辞書から拾い上げる
黒革の財布から
美しい新札をとりだして
窓口へ出したら
役所の人は静かに首を振りました
満月の夜に
新札は縁起が悪いからと
天球儀の奥底で
見つめ合った二人は
罪の重さを知らなかった
罰を畏れる
敬虔を欠いていた
夢見の悪い朝に
目覚まし時計を叩いた女の子
彼女の不機嫌な顔は
針金のようにとがって見えた
その怠惰なシルエット
明け方の街にしきつめられた
よわい霧雨