サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

詩作 「せんたくもの」

気温が上がらないので

洗濯物が乾かない

じめじめと冷えているあなたのシャツ

コーデュロイのズボン

麻のジャケット

コットンの肌着

秋の穏やかな光

 

わたしは小さいころ

愚図な女の子だった

あれから三十年近い月日が知らぬ間にながれた

靴音さえ聞こえぬ

忍者のすばやさで

季節は巡りつづけた

あなたと出会うまで

わたしは小さな女の子のままだった

何も知らない不確かな闇のなかで

わたしはきっとその日を待っていたのだ

 

賑やかな街の音が遠く響く

気温が上がるまで

コーヒーでも飲んでいよう

黄昏まで

まだ時間は残っている

あなたは懸命に働いているだろう

わたしの知らない街角で

靴底をすりへらして

いつまでも乾かないあなたのフランネルのシャツ

オックスフォードシャツ

灰色のジーンズ

秋の午下がり

小さなころの写真立て