サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

詩作 「ありふれた世界で」

こんなにも眩しく

輝くとは思ってもいなかった

世界の隙間から

幾つかの指が伸びる

音も立てずに

翅を震わせ

あなたは蛍のように舞い散る

火花 赫い火花

 

こんなにも眩しく

光っている世界

眼差しが届かない 奥まった部屋の錠前

あなたの遺した手紙を無言で読む

行間の空白に

白い光が

滲み始めるまで 粘り強く 声を殺して

 

ありふれた世界であったものが

失われた世界へ変貌する 運命の一刻

失われた世界の 忘れえぬ音楽

ピアニストは静かに蓋を下ろした

白木の棺に

別れを告げるように しめやかに

 

私は計えていた

闇の懐で

遺された時間の目盛りを

眼を凝らして

光り 濫れよ

ありふれた世界の冥い冥い淵に

あなただけの墓標が 聳えるように