サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

詩作 「分断史」

わたしたちの暮らす この世界は
数多の異なる断片に 引き裂かれている
わたしたちは国境によって隔てられ
数えきれないほど多くの
諍いに 血塗られている
戦場に滾り立つ硝煙の やるせない調べ
はげしく罵り合う 幾つもの車座
巡航ミサイルの悲しげな歌声
どんな願いも 浸食されていく黄昏れ
わたしたちは赦しあうことを忘れている
そういう美徳に 鈍感になっている
今日も真っ青な空を戦闘機が斜めにつらぬき
次第に暗くなっていく街並に 轟音が鳴りわたる
わたしたちは互いに へだてられている(愛別離苦
心から希うものが何なのか
忘れ去ってしまったような 無機質な横顔で

得られないもの(求不得苦)
触れられないものが数多くはびこる この街で
わたしたちが知らぬ間に落として失くしたものは
地図の上にも 記憶の中にも
探りあてられない
国境線の向こう側に投げ込まれる粗暴な榴弾
言葉が違えば ただちに通じ合わなくなるとでもいうのか
憎しみに 限界などありえないと
貴方たちはうそぶくのか
壁がそそり立ち
わたしたちは日没の禍々しい光りの下で
登録された罪障を かぞえあげる
わたしたちの暮らす この世界は今日も
壊れた横笛のような悲鳴にみちている