サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

詩作 「歌うこと」

花びらが少しずつ散り
鳥の囀りが鼓膜をさすり
風鳴りに眼を覚まし
消えかかった月の薄い輪郭線を
眼でなぞる
花鳥風月 古今東西
私たちの国の 舗装された大地の奥底で
死者たちは けらけらと笑っている

私たちはなぜ歌うのか
今宵の月が 明るいからか
別れた人が 恋しいからか
叶わぬ夢が 淋しいからか
答えもないのに リュートを爪弾き
想いを馳せる 琵琶法師の磐座

お前が誰なのか 俺は知らない
巡り巡って 闇夜に溶ける
切ないような 哀しいような
月夜の光 こころのひかり

花鳥風月の
平凡な書き割りのなかで
運命を転がすように
私は大声で歌った
泣き叫ぶような歌声に
誰もが面食らっていた
今夜 世界の天井裏がひらく
隠されていた
秘密が ほどける