サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

詩作 「墓参」

白々と光っている
御影石の向こう側に
貴方の顔が浮かんでいる
その純粋な錯覚の
美しい手触りに
時雨が降りかかる
命日という言葉が
私は好きじゃない

死んでしまった者のために
営まれる壮麗な儀式や
仰々しい習慣や
それら一切の複雑な纏まりのなかで
静かに霞んでいく記憶の淵で
私は何を語ればよいのか分からなくなる
避け難い沈黙に
雷撃のように打たれる
白々と光っている御影石の向こう側には
いつもと変わらぬ
燦然たる夏の街衢が
太陽の下で燃えている

草むらの底では
地虫の声が沸き立ち
清らかな水を注がれた墓碑には
貴方の名前が深々と彫り込まれている
幾多の嵐を乗り越え
沈鬱な夜の揺籃を踏み越えて
私は今ここに立っている
踏み締めているものがある
大地の
脈動と疼痛と
貴方の想い出と
乗り越えられない最後の絶壁

死んでしまった者の手懸りを得ようと
砂浜の上を歩く葬送の行列
私は
あふれんばかりの光の渦中で
窒息するように夢を見ていた
あの頃
貴方がまだ生きていた頃の
童話のような風景の夢を