サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

詩作 「後朝」

後朝のわかれに
手荒く髪を整えて
手早く外套を羽織るあなたの
冷え切った横顔には
月の光のような輪郭
わたしは
躊躇いがちに時計の文字盤を読んでみる
トーストとコーヒーの
ささやかな朝食を共に迎えるひまもない

後朝の
わかれが
積み重なっていく
その砂時計のような
重さの高鳴りに
ふと息苦しくなり
わたしは何が始まりだったのかを
丁寧に思い出そうと努力する
それは繊細な光のなかで
一瞬だけ訪れた秘蹟のように美しいけれど
証拠品は一つも
この掌には遺されていない

後朝のわかれ
明日の約束を言い出すことがこわい
却下された申請の数は
叶えられた逢瀬の数よりも遥かに多く
そしてわたしたちはいつも口数が少ない
朝焼けが窓を染めて
いつも私は先に眼を覚ます
これっきりかも知れないと
改めて考えることの恐ろしさに
いつも黙って眼を伏せている