「人間通」の文学 / 「虚無」と「思想」のあわい

坂口安吾が太宰治について書いた有名なエッセイ「不良少年とキリスト」の中に、次のような記述が含まれている。 芥川にしても、太宰にしても、彼らの小説は、心理通、人間通の作品で、思想性は殆どない。 虚無というものは、思想ではないのである。人間そのものに附属した生理的な精神内容で、思想というものは、もっとバ…