サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

2018-08-24から1日間の記事一覧

小説「月影」 1

人から、どういう娘さんでしたかと訊かれる度に、私の唇は堪え難い重圧のために素気なく閉ざされてしまう。そうした現象に抗おうと試みても、鋼鉄の城門のように、或いは濠を渡る頑丈な跳ね橋が敵襲を察して遽しく引き揚げられるように、私の唇は半ば自動的…

ニヒリズムの多様な範型 三島由紀夫「鏡子の家」 6

引き続き、三島由紀夫の『鏡子の家』(新潮文庫)に就いて書く。 ⑤「醜悪な現実」とオカルティズム 感性的な「美」の範型に従属し、芸術家として「時間的法則」を免かれた世界で無秩序と遊戯の日々に暮らしてきた夏雄の平穏な境涯は、徐々に「人間的関心」に…