サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

艱難と克己 セネカ「怒りについて」 2

古代ローマの政治家であり哲人であったセネカの『怒りについて』(岩波文庫)を読む。 劈頭の「摂理について」に続けて収められた「賢者の恒心について」もまた、専ら「徳」に殉じて歩む賢者の清廉な生き方に対して、自然や社会が加える不正への懸念を取り扱…

艱難と克己 セネカ「怒りについて」 1

古代ローマの政治家であり哲人であるセネカの『怒りについて』(岩波文庫)を目下繙読中なので、覚書を認めておく。 本書の劈頭に収録された「摂理について」は、何故、正義を遵守する善人に対して種々の災厄が降り掛かるのか、という伝統的な疑念への応答を…

「意志」という名の欺瞞 ラ・ロシュフコー「箴言集」

十七世紀フランスの所謂「モラリスト」の一人として名高いラ・ロシュフコーの『箴言集』(講談社学術文庫)を読了したので、感想の断片を書き留めておく。 人間の生活や行動、歴史的な故事を調べて独自の知見を引き出すという著述の骨法は、特段モラリストに…

Cahier(榎本武揚・誠品書店・箴言集)

*近頃は『他人の顔』を読み終えた勢いに乗じて、安部公房の『榎本武揚』(中公文庫)を読んでいたのだが、段々と気が進まなくなって中断した。先日の仕事の帰りに、日本橋室町のコレドに入っている誠品書店へ立ち寄り、台湾のテント生地を使用した水色のブ…

サラダ坊主風土記 「勝浦・小湊・大多喜」 其の三

旅行二日目の朝も早起きをした。ビュッフェ形式の朝食を摂り、部屋に戻って手早く仕度を整え、ホテルの玄関で記念写真を撮ってから、マイクロバスで安房小湊駅まで送ってもらう。途次、土産物屋と和菓子屋に立ち寄って買い物をした。地元の銘菓である「いろ…

サラダ坊主風土記 「勝浦・小湊・大多喜」 其の二

外房線の安房小湊駅は、鴨川市に属する鄙びた港町に鎮座している。駅前には巨大なセブンイレブン(天津小湊店)があり、恐らく通常のコンビニの範疇を越えて、地域に密着したスーパーマーケットの機能も兼ねているのではないかと思われる。見るからに儲かっ…

サラダ坊主風土記 「勝浦・小湊・大多喜」 其の一

過日、妻子に義母を加えた四人で南総地方へ一泊二日の旅行に出掛けたので、その覚書を認める。 此度の企図の発端は、幸運にも妻が引き当てた「ディスカバー千葉」の宿泊者優待キャンペーンであった。一人当たり一泊最大五千円の割引が受けられる観光促進の企…

My Own Scarface 安部公房「他人の顔」

安部公房の『他人の顔』(新潮文庫)を読了したので、感想文を認める。 業務中の不慮の事故で顔面に深刻なケロイドを負い、自らの「容貌」を喪失した男が、精巧な仮面を作り上げて他者との関係の恢復を試みる「他人の顔」の筋書きは、如何にも安部公房らしい…

Cahier(時間の雫)

*三十五歳になった。年齢の目盛りが一つ進んだところで、日々の生活に根本的な変化が生じる訳ではない。新生児と一歳児との間に、巨大で劇的な成長の過程が横たわっているのとは違って、三十四歳から三十五歳への移行の歳月には、傍目には何の区別もつかな…