2016-04-01から1ヶ月間の記事一覧
久しぶりに記事を書く。 最近、ミラン・クンデラの「存在の耐えられない軽さ」(集英社文庫)という長篇小説を少しずつ読んでいる。チェコで生まれ、「プラハの春」を支持した廉で著作の発禁処分を蒙り、国籍を剥奪され、フランスへ亡命したという、激動の「…
伊藤計劃の「虐殺器官」を読み終えたので感想を書き留めておく。 テロリズムと監視社会、という如何にも現代の社会情勢の推移に相応しい主題が鏤められたこの作品を、或る種の時事的な想像力の所産として位置付けることは容易である。高度に情報化された社会…
以前にも、このブログで取り上げた大岡昇平の「野火」という小説は、真面目くさって読んだならば紛れもない凄絶な戦争文学であり、そこには神の光すら射し込んでいるが、冷静に文字を追っていくと、どこか不真面目というか、突き放したような自意識の屈折が…
ネットに流布する西洋占星術の断片的な情報を徴する限り、私は太陽が蠍座、月が獅子座で、個人のパーソナリティを構成する最も重要なサインが二つとも「不動宮」(Fixed Sign)に属するという筋金入りの頑固者である。子供の頃から癇が強くて強情な気質であ…
ビートたけしの名前は、日本人ならば恐らく誰でも知っているだろう。今ではコメディアンとしてよりも「映画監督」としての声価の方が世界的に高まっているし、致命的なバイク事故以来の滑舌の悪化で持ち味のマシンガントークが精彩を欠いていることもあり、…
最近、牛歩並みの速度でのろのろと蛇行しながら読み進めている伊藤計劃の「虐殺器官」に、次のような文章が記されていた。 「『その頃、天下の人を戸籍に著かすべき詔令、カイザル・アウグストより出づ。この戸籍登録は、クレニオ、シリヤの総督たりし時に行…
仕事を終えて眠る直前の僅かなひと時に、柄谷行人の「坂口安吾と中上健次」(講談社文芸文庫)を漫然と拾い読みしていたら、次のような記述に出喰わした。 この時、中上はもはや子の立場から過去を見ているのではない。自分のやっていることは、それまで嫌悪…
分かり易いということ、理解するのに努力を要さないということ、それらの啓蒙主義的な価値観は、私たちの暮らす世界では、節操を欠くほどに猖獗を極めている。その最たるものは、例えば広告収入を当て込んで製作される民放のテレビ番組で、ちょっとでも視聴…
先日の記事の続きを書く。 saladboze.hatenablog.com 暴力、それも国家によって独占的に管理された合法的な暴力としての「軍事力」の行使が、様々な歴史的反省を踏まえて、諸々の規律に厳しく締め上げられ、自由や放埓と無縁の委縮の中に閉じ込められている…