サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

2015-01-01から1年間の記事一覧

長崎に黒い雨が降る 山田洋次監督「母と暮せば」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 今夜は山田洋次監督の新作映画「母と暮せば」について書きます。 2015年は敗戦から70周年ということで、戦争に題材を取った映画やドラマ、ドキュメンタリーなどが目立つような気もします。この「母と暮せば」とい…

自由とは一つの残酷な「刑罰」に過ぎない 安部公房「砂の女」をめぐって

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 いよいよ年末も押し迫ってまいりました今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。正月休み、特に遣ることもなくて暇だという方もいらっしゃるかもしれませんね。そんな方々の慰みの一助となるべく、今日は小説の御紹介…

虚栄心の構造 私たちは自分の本当の欲望を直視することがへたくそだ

どうも御無沙汰しております、サラダ坊主です。 クリスマス商戦に忙殺されて家に帰る暇もないくらいの有様で、ブログの更新も滞っておりました。一息ついたら今度は年末年始の商戦に突入します。成人式を過ぎるころには漸く激務も一区切りとなるので、なんと…

単なる形式としての「推理小説」を越えて アーサー・コナン・ドイル「緋色の研究」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 初めてシャーロック・ホームズという名探偵の名前を聞いたのがいつだったか、もう精確には思い出せませんが、パイプを燻らせ、鹿撃ち帽(deerstalker hat)を被った怜悧な頭脳の持ち主というイメージは、知らぬ間に少年…

遊離する欲望 わたしたちは「実体のないもの」を愛する

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 以前、私は「物質的幸福」に対する倦怠や不信が蔓延する時代においては、「精神的幸福」とでも称すべき「形のない対象」への欲望が強まる風潮があるというような意味のことを、このブログの記事に書きました。 saladboze…

光と影の叙事詩 「ファイナルファンタジーⅦ」 3 ゲームに「思想」を見出せるとするならば

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 本日は以前に続き物として書き出しておきながら、そのまま完結させずに放置していた記事の続きをアップしようと思います。 saladboze.hatenablog.com saladboze.hatenablog.com 「ファイナルファンタジーⅦ」という作品は…

「胎児」から「対自」へ / 「未生」の脱却について

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 今夜も抽象的なタイトルの記事を書きます。 以前、こういうエントリーをアップしたことがあります。 saladboze.hatenablog.com この記事の中で私は、人間の特質として「記憶」という機能が爆発的な進化を遂げたこと、記…

再び「芽むしり仔撃ち」について / 「差別」をめぐる断片的考察

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 本日は、以前にも取り上げたことのあるテーマについて、異なった角度から照明を当ててみたいと思います。 saladboze.hatenablog.com 大江健三郎の「芽むしり仔撃ち」という小説について、以前に上記の記事を書いたのです…

小説を書くという特殊な作業 「それは何が語っているのか?」

どうもこんにちは、サラダ坊主です。 今日も何の脈絡もなく、思いついたことを書き記したいと思います。 以前にも何度か触れたことがあるのですが、私は昔から個人的な趣味として小説を書いてきました。殆どまともに完結させたこともなく、流産に流産を重ね…

「レイシズム」という宗教 映画「杉原千畝 スギハラチウネ」をめぐって 2

どうもこんにちは、サラダ坊主です。 先日アップしたエントリーの続きを書こうと思います。 saladboze.hatenablog.com ヘブライ人の民族的共同体における宗教的信仰として形成されたと思しきユダヤ教は、ナザレのイエスという革命的な改革者によってキリスト…

「レイシズム」という宗教 映画「杉原千畝 スギハラチウネ」をめぐって 1

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 先日、船橋のららぽーとで最近公開された唐沢寿明主演の映画「杉原千畝 スギハラチウネ」を鑑賞してまいりました。第二次世界大戦中の東欧リトアニアを舞台に、ナチスドイツから民族浄化の対象に選ばれ、行き場を失った…

「同胞」という快楽 「幻想水滸伝Ⅱ」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 本日は久しぶりにテレビゲームについての記事を書きます。 コナミから1998年12月に発売されたプレイステーション用RPG「幻想水滸伝Ⅱ」は、私が今まで楽しんできたゲームの中でも五本の指に入る名作です。 架空…

「正解がない」という自由 / 「古典主義」というイデオロギーの退嬰性について 2

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 本日は昨夜のエントリーの続きを書きます。 saladboze.hatenablog.com 一つの仕事を続けていると、当然のことながら部下や後輩の教育を任される場面というのが徐々に増えてきます。その中には春に大学を卒業したばかりの…

「答えは既に出ている」という幻想 / 「古典主義」というイデオロギーの退嬰性について 1

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 今日は何だか堅苦しい表題の下に徒然と言葉を書き連ねようと思います。 物々しいタイトルなので敬遠されるかもしれませんが、中には物好きな方もいらっしゃって、興味を惹かれるかも分かりません。そうでなくとも、少な…

「面白さ」とは「理解し難さ」である 乾石智子「夜の写本師」

どうもこんばんは、毎度お馴染みサラダ坊主です。 本日無事に読了しました乾石智子さんの「夜の写本師」というファンタジー小説について書きます。 2011年に発表され、著者の出世作となったこの小説は、巷間に蔓延る凡百の安っぽいファンタジーとは一線…

「異界転生」という普遍的な類型について

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 ネット上では頻繁に指摘されている事柄ですが、「小説家になろう」という超巨大小説投稿サイトのランキング上位を占めている人気作品の数々は、その大半が「異世界への転生」という物語のフォーマットを採用しています。…

「文弱」という病 三島由紀夫とともに

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 本日は三島由紀夫について書きたいと思います。 以前、三島の数多い代表作の一つ「金閣寺」について下記のエントリーを書いたのですが、苦労した割に出来栄えが今一つで、どうにも不完全燃焼な気持ちが消えないので、補…

幽閉された「悪意」の増殖 映画「ソロモンの偽証」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 本日は、これも若干旧聞に属する作品ですが、映画「ソロモンの偽証」について思うところを述べたいと思います。 この作品は宮部みゆきの小説を原作としており、劇場用実写映画は「前篇・事件」と「後篇・裁判」の二部作…

「常世」と「現世」のはざまで生きること 川上弘美「真鶴」

どうもこんにちは、サラダ坊主です。 今日は川上弘美の傑作小説「真鶴」について書きます。 川上さんは、実に独特のポジションに立っている作家だと思います。 その文章は一見すると穏やかで柔らかくて儚げで、圭角のない読み心地ですが、その淡々と綴られる…

サラダ坊主風土記 「長野」(善光寺・小布施・湯田中) 其の一

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 今回はちょっと趣向を変えまして、紀行文めいた雑文を草して、ネットの大海へ晒してみたいと思います。 今年の夏の終わりに私は妻と長野県へ旅行にいきました。私にとって「長野県」というのはかつて足を踏み入れたこと…

「モノ」と「コト」の幸福論 無常観の反復

どうもこんばんは、毎度おなじみサラダ坊主です。 今回は「天職」という幻想的な概念について書きます。 私は小学生の頃から小説家になりたいと思っていて、三十歳の誕生日を迎えた今もその夢を諦めきれずに、個人的な趣味として創作活動を続けているのです…

「文明」と「文化」の差異について

どうもこんにちは、サラダ坊主です。 本日も抽象的なテーマで徒然と雑文を草します。 日本語には「文明」という単語と「文化」という単語があります。どっちも似たような意味合いに聞こえる一方、本によっては明確な区別をして用いている場合もあります。例…

「戦争」は選択し得るものなのか

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 最近、世の中には血腥いニュースがあふれています。 先日もロシア軍の戦闘機をトルコ軍が領空侵犯を理由に撃墜した挙句、パラシュートで脱出したロシア兵が、トルコ系の武装勢力の攻撃を受けて死亡するという悲劇が起こ…

「若者」というマイノリティ / 「高齢化」というライフスタイル

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 本日も徒然なるままに他愛のない雑感を綴ろうと思います。 仕事をしていても、テレビや新聞やネットを見ていても、日本は「少子高齢化」の時代であるという言説を耳にすることがよくあります。別に最近になって語られ始…

「ノベル(小説)」と「ロマンス(物語)」の背反に就いて

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 今回も随分と抽象的なテーマを扱うことになります。辛抱してお付き合い頂けると幸いです。 私は個人的な趣味として昔から小説を書いているのですが、当然のことながら「小説」というのは、そう簡単に書けるものではあり…

表現の自由という、名状し難い「困難」 映画「図書館戦争 -THE LAST MISSION-」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 本日は、やや旧聞に属するテーマかも知れませんが、10月10日に公開されて大ヒットを記録している実写映画「図書館戦争」の続編について書きたいと思います。 内容としては前作同様、有川浩の原作小説から大きく逸脱…

「幽霊」の政治学 映画「桐島、部活やめるってよ」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 今夜は2011年に公開された映画「桐島、部活やめるってよ」について書きます。 この作品は元々、朝井リョウの書いた小説が原作ですが、映画化された作品は原作のニュアンスを残しつつも、遥かに上質な芸術作品へ昇華…

「洗練」という名の停滞

どうもこんばんは、船橋在住のサラダ坊主です。 今夜も何の結論もないことを徒然と書き綴ります。 どんな領域にも共通して言えることですが、或る新しい分野が誰かの独創的な努力によって開拓されたとき、そこには無限の可能性が広がっていると同時に、無限…

「個人」と「制度」の相剋 田中芳樹「銀河英雄伝説」

どうもこんにちは、サラダ坊主です。 本日は私が最も愛する小説の一つ、田中芳樹の「銀河英雄伝説」について書きたいと思います。 過去にはアニメ化もされている、この有名なスペースオペラは、創元文庫で本編10巻、外伝5巻というボリュームの壮大な物語…

「正義」と「愛情」は相容れない

皆さんは「喧嘩」ってしたことありますか? 勿論、喧嘩にも様々なパターンがあります。例えば友人との喧嘩、親子喧嘩、客と店員の喧嘩、上司と部下の喧嘩、赤の他人との喧嘩、恋人や夫婦間の喧嘩。 その中でも私が特に取り上げたいのは「恋人同士の喧嘩」と…