サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

政治的権威の「盗用/奪還」 坂井孝一「承久の乱」 1

坂井孝一の『承久の乱』(中公新書)を読了したので感想文を認める。 後鳥羽院と鎌倉幕府との間に勃発した中世期の大乱である「承久の乱」の経緯と構造の解明に焦点を当てた本書は、読者の精密で行き届いた理解を促す為に「承久の乱」のみならず、そこへ至る…

「中央集権」を拒絶する風土 佐藤進一「日本の中世国家」 2

佐藤進一の『日本の中世国家』(岩波文庫)に就いて書く。 治承・寿永の苛烈な内乱を経て東国に誕生した鎌倉幕府は、王朝期における官職の「家職化」という傾向の新たな展開、その画期的な帰結であると言えるだろう。天皇を頂点とする日本の国政の体系は、少…

「中央集権」を拒絶する風土 佐藤進一「日本の中世国家」 1

佐藤進一の『日本の中世国家』(岩波文庫)を読了したので、感想文を認める。 一応、通読は済んだとはいえ、律令制国家から室町幕府へ至る国家権力の構造の変遷を取り扱った本書は、私の如き歴史の初学者を念頭に置いて執筆されたものではなく、日本史に関す…

サラダ坊主風土記 「銚子・犬吠埼」 其の三

銚子旅行の二日目、ホテルのビュッフェ形式の朝食を頂き(コロナの感染防止策の一環として個人別の紙製のトングが用意されていた)、チェックアウトの手続きを済ませてタクシーを呼んでもらった。ホテルの駐車場の一隅に岩礁を模した露天の水槽があり、数匹…

サラダ坊主風土記 「銚子・犬吠埼」 其の二

銚子電鉄の古めかしく老朽化した車両に揺られ、我々は終点の一つ手前、犬吠の駅に向かって出発した。娘は疲れが出たのか、私の膝に凭れて寝入ってしまった。車内には広告の代わりに、或いは広告を兼ねて、銚子の醤油醸造や漁業の歴史に関する説明が掲示され…

サラダ坊主風土記 「銚子・犬吠埼」 其の一

家族で一泊二日の銚子旅行に出掛けたので、その記録を簡潔に書き留めておく。 新型コロナウイルスの感染拡大以来、人間の移動は制限され、旅客は著しく減少し、東京駅の構内に立地する私の配属先の店舗も、売上の激減に苦しんでいる。今夏の盆休みの新幹線指…

「権威/権力」の例外的統合 森茂暁「南朝全史」

俄かに歴史の勉強を思い立って、無きに等しい知識の培養と底上げを図り、日本史に関する解説書の類を渉猟している。いきなり古典や史書に挑むのは命知らずの蛮勇なので、成る可く分かり易いもの、素人でも辛うじて読みこなせるものを探している。 学生の頃、…

Cahier(「作品」の歴史的条件)

*「事実は小説より奇なり」(Truth is stranger than fiction)と英国の詩人バイロンは言った。一般に小説家は様々な経験や伝聞や私見を混ぜ合わせて、虚構の物語を作り出す。その原料が現実の世界、我々の肉体を囲繞する世界から採取されるものであることは…

Cahier(混迷の時代)

*世界は混迷の時代を迎えている。無論、混迷というものが一切存在しない時代は古今東西を通じて一度もなかったに違いないが、新型コロナウイルスの世界的な蔓延という不測の事態に蝕まれて、従来の常識や秩序や手法が音を立てて瓦解し、未来に関する見通し…

Cahier(疫病の年の覚書)

*新型コロナウイルスの感染爆発の第二波が峠を越えたと言われているが、恐らくは冬が来るまでに第三のピークが襲来するのだろうし、経済の悪化、雇用の悪化、消費の悪化は相変わらずで、何処まで景気が没落するのか知れたものではない。緩やかな恢復の徴候…