サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

Cahier

Cahier(依存・小利口・堕落・暗部)

*他人に依存するのではなく、自分の外側に接続されている諸々の外在的な権威に頼るのでもなく、自分自身の力と判断で、責任を引き受けて生きること、他人の存在を言い訳に用いて自分の信念や欲望を圧殺しないこと、不満の原因を他人に求めないこと、言い換…

Cahier(共依存・執著・渇愛)

*「共依存」という言葉がある。元々はアルコール依存症の患者とその家族との癒着した関係性の病態を指す為に、看護の現場から案出された概念であるらしい。その語義を極めて大掴みに咬み砕いて言えば「特定の人間関係に対する過剰なアディクション(addicti…

Cahier(自立・恐懼・隠遁)

*自立するということは何も、あらゆる規範を踏み破って手前勝手な欲望を殊更に強調し、他人の事情を一切斟酌せずに放縦に振舞うということではない。無論、自立するということは、他人の組み立てる種々の思惑に押し流されない強固な判断力や思考力の構築を…

Cahier(道徳・良識・保守)

*自分の感じたことや考えたことに固執するのは、偏屈ということだ。そして偏屈であったり強情であったりすることは、一般論としては世間から余り好意的な眼差しを向けられない生活の態度である。自分の考えや意見、信念、主張に固執して、他人の忠告や訓誡…

Cahier(感情の濃縮・外界の不在・匿名性)

*感情の濃縮は、逃れ難い人間関係において生じる。時に相手に対する殺意にまで高まるほどの劇しい情念は、容易く着脱し得る合理的な人間関係の内部では充分に醸成されない。成程、確かに世の中には、通り魔による無作為な殺人や暴行の類が頻発している。だ…

Cahier(有限・不可能・祈り)

*永遠の愛とは、恋の堕落した形態であると、試しに言い切ってみる。つまり、いつか必ず訣別の刻限を迎えるものとされている筈の恋を、永遠に持続させようとする不穏当な欲望が、永遠の愛という崇高で空虚な理念を、一つの宗教的な象徴のように掲揚してみせ…

Cahier(視線・他者・内在的対話)

*「見る」という行為、必ずしも完全に主体的であるとは言えないが、往々にして人間の主体性の積極的な発露であると考えられている「見る」という行為には、複雑な政治的含意が備わっている。そこには「権力」というものの痕跡が露骨に刻み込まれている。 今…

Cahier(幸福・未来と現在・自律)

*「幸福」というものには誰しも漠然たる憧れを懐き、少なくとも不幸のどん底を這い回るよりは幸福で安楽な生活を送りたいと通俗的な願いを懐くのは庶民の慣習である。無論、私だって好んで不幸な、悲惨な境涯へ自ら歩みを進めたいとは思わないし、苛酷な修…

Cahier(自己支配・組織・不純な悪人)

*他人を支配しようとする心、言い換えれば「権力」に対する欲望は、様々な仮面と擬装を伴って、人間の社会の到る所に厭らしく浸潤している。権力の機能は、多くの場合、何らかの尤もらしい大義名分を隠れ蓑に纏い、如何にも道徳的な口実を悪用して、あらゆ…

Cahier(自由・面従腹背・闘う勇気)

*最近、改めて「自由」というものの価値に就いて考える時間が多い。 「自由」という言葉を通じて、私が指し示したいと思っている対象は「何でも自分の思い通りにしたい」という風な、幼稚で独善的な欲望ではない。そもそも無数の時間的、空間的、物理的、社…

Cahier(「金閣寺」再読・紀州神話・作家の実存)

*三島由紀夫の「沈める滝」(新潮文庫)を読了したので、今は同じ作者の誉れ高き代表作である「金閣寺」(同上)を再読している。きちんと読み返すのは十年振りではないだろうか。改めて、その緊密で観念的な文章の厳密な彫琢に惚れ惚れしている。 三島が「…

Cahier(「沈める滝」・作家主義・mysticism)

*三島由紀夫の「潮騒」を読み終えて感想文を書いたので、今日から同じ作者の「沈める滝」(新潮文庫)を繙き始めた。未だ冒頭の数ページしか読んでいないので、具体的な感想など書きようもないが、主役の城所昇の人物像には「禁色」の南悠一と「青の時代」…

Cahier(新年度・会者定離・nostalgia)

*明日から、新年度が本格的なスタートを切る。何処の会社でも家庭でも組織でも、卒業の別れ、異動や転職の別れ、移住の別れを一通り嘆いたり悲しんだりして、新しい生活への心構えを整えた後の、愈々の門出の場面が数多く演じられるのだろう。私の勤め先は…

Cahier(禁忌・罪悪・実存)

*この世界には、数え切れぬほど多くの「禁忌」が存在し、人間の心理と生活を縦横に縛っている。昨年の暮れから読んでいる三島由紀夫の「禁色」には、女を愛することの出来ない美青年の苦悩が描かれているが、例えば「同性愛」というものに対する社会的な禁…

Cahier(蹉跌・苦悩・里程標)

*昨夜、仕事の後、退職を希望する部下の社員と酒を交えて話をした。強く慰留しようという意思を持って、その場に臨んだ訳ではない。ただ、自分の経験を踏まえて、幾つかアドヴァイスを試みた。 その女の子は、典型的に仕事が出来ないタイプである。第一に自…

Cahier(「神」という、或る垂直な関係性)

*夏目漱石は百余年前の昔、「草枕」の冒頭に「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい」という著名な文句を書きつけた。一世紀が経っても、地上の事情は変わらない。大半の問題は人と人との狭間で起こ…

Cahier(内在性・外在性・parallax)

*物事は、外側から眺める場合と内側から見凝める場合とでは、全く見え方が異なるものである。それを単純に「客観=主観」という言葉で表現することが適切かどうかは知らない。ただ、一般的には物事を客観的な目線で捉えることの重要性が強調されがちである…

Cahier(常住・煩悩・一期一会)

*永遠を願うことは、人間の切なる祈りである。それが不可能な願いであることは、長い人類の歴史上で、無数の残酷な実例が悉く立証しているにも拘らず、未だにその願いが死滅する徴候は発見されていない。誰もが不可能であることを予感しながら、切実な感情…

Cahier(「永遠」と「所有」の生理学)

*「所有」という観念は常に、もう一つの重要で根源的な理念、即ち「永遠」という観念との間に密接な関係性を有している。永遠を願うとき、人は特定の状況、特定の事象、特定の関係が、最も望ましい瞬間の状態で未来永劫、固定的に維持されることを劇しく希…

Cahier(所有の心理的側面)

*何かを所有するということ、それは随分と有り触れた、在り来たりの事態のように感じられるけれども、その仕組みは、考えてみれば随分と曖昧模糊としている。私が何かを所有するとき、その権利はどのような仕組みや約束事の上に成り立っているのだろうか。…

Cahier(情念という怪物)

*感情というものは、非常に厄介な代物で、一種の寄生虫のような性質を持っている。宿主の意思とは裏腹に、それ自体の独特の原理に従って勝手に動き回り、理性の命令に容易く反抗し、直ぐに逃げ道を探し当てようと悪足掻きを繰り返す。 感情という生き物は無…

Cahier(渇愛・結婚・永遠性)

*恋愛の情熱ほど、結婚の論理に敵対的なものは他に存在しない。この命題は、様々な現代的誤解に彩られて、なかなか直視されずにいる。多くの人々は、結婚というものは恋愛の延長線上に存在していると素朴に信じ込んで、その素朴な信仰の秘められた実情を疑…

Cahier(新しい言葉・愚昧な凡夫)

*もう直ぐ二歳になる娘が猛烈な勢いで、どんどん新しい言葉を覚えていく。むしゃむしゃと白米を咀嚼するように、鼓膜に触れた単語や言い回しを次々に消化吸収している。そうやって刻々と彼女の瞳に映じる世界の風景は、新鮮な側面を万華鏡のように切り替え…

Cahier(蠍座・支配力・不都合な真実)

*たまに、所謂「星占い」という奴をスマホで検索して眺めてみたりすることがある。大抵、そういうときは、自分の身の上に何か入り組んだ問題が生じて、巧く方針を定められずに思い悩んでいるのが通例である。自分の頭では適切に答えを導き出せないものだか…

Cahier(三島由紀夫「禁色」・恋情・倫理)

*昨年の暮れから読み始めた三島由紀夫の「禁色」(新潮文庫)だが、丁度仕事の最も立て込む時期に重なった所為もあって、なかなかページを繰る手が捗らない。決してつまらない訳ではなく、底意地の悪い心理的解剖が丁寧に積み上げられて面白いのだが、やは…

Cahier(結婚の社会的機能)

*「結婚」という法的な選択肢を自らの人生に引き受けることの個人史的な背景や経緯は、実に様々である。往々にして、現代の日本人は「結婚」を「恋愛」の幸福な結論として捉える考え方に浸り切っている。それは確かに間違いではないし、「恋愛」から「結婚…

Cahier(契機と理由・潜在的なものと本質的なもの)

*或る現象が生じたときに、私たちはそれが生じた「きっかけ」や「理由」を探索し、特定しようと試みる場合がある。だが、これらの二つの観念、つまり「契機」と「理由」との間には、極めて抽象的な次元において、微妙な相違点を孕んでいるのではないかと考…

Cahier(愛情・依存・貢献)

*愛情と依存は本質的に異なった感情である筈だが、私たちは極めて容易に両者を混同してしまうし、感情だけの次元に脚光を浴びせてみれば、それほど決定的な差異が介在しているようには見えないのも事実である。 人間は生きていく上で実に様々な対象に向かっ…

Cahier(育てる者の責務)

*今期の新入社員が、今月一杯で他の店舗へ異動していく。後任の補充はない。四月に来年度の新入社員たちが配属されてくるまで、堪え忍びなさいという会社からの暗黙の御達しである。毎年の慣行なので、今更狼狽しようとは思わないが、そうした無理な人事異…

Cahier(往く年の挽歌)

*十二月も折り返しを過ぎて、師走の風は益々靴音を高鳴らせている。 もう直ぐ年に一度のクリスマスが到来する。地獄のような繁忙期、夜明け前から起き出して、寒風の吹き荒ぶ暗い路地を歩いて、そこだけ目映く見える静謐な京成電車へ乗り込んで、職場へ赴く…