サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

Cahier

Cahier(酷暑・京都・夏の光り・サカナクション)

*酷暑が続いている。茹だるような暑さという表現の相応しい日々が、人の生命さえも奪っている。娘は体温が上がると蕁麻疹が出る。汗疹も出るので、二重の苦しみだ。止むを得ず家ではずっと冷房を利かせている。機嫌の悪い娘を見るのは辛いのだ。 八月の盆休…

Cahier(夏季休暇・東北・疲労の価値)

*月末に連休を取って家族旅行へ出掛けることにした。行き先は盛岡と小岩井農場である。昨年の夏は生まれて初めて仙台と松島を周遊した。二歳の娘を連れているので、行き先の選定には頭を抱えることが多い。自然に触れさせてやりたいと思うものの、本当の大…

Cahier(禍福・艱難・生きる歓び)

*生きていれば嫌なことも億劫なこともあるもので、同じように愉しいことも幾らでもある。その狭間でシーソーのように揺れ動くのが生きることの基本的な光景だろう。これと決めた道程を真直ぐに歩んで、疑いも何も持たずにいられたら、それはとても安逸で幸…

Cahier(退院・新婚・nihilism)

*昨日、母親から、鬱血性心不全の為に入院していた父親が無事に退院することに決まったと報せてきた。早ければ一週間、長ければ三週間という事前の見立てであったから、比較的症状は軽微で済んだものと思われる。母親はメールの文末に、此れからは自己管理…

Cahier(老父・入院・寂寥)

*先日、勤務中に母親からメールが届いた。父親が鬱血性心不全という診断を受けて、松戸市内の総合病院に緊急入院したという報せである。慢性的な高血圧を抱えて、以前から服薬の習慣は持っていたものの、私の知る限り大病とは無縁の生活を送っていた父親が…

Cahier(集大成・夏風邪・賞与)

*引き続き、三島由紀夫の「鏡子の家」(新潮文庫)をちまちまと読んでいる。もう直ぐ全体の半分ほどの地点まで到達するところである。詳しい感想は全篇を読了した後に綴る心積もりだが、備忘の為にメモを記しておきたい。 この「鏡子の家」という分厚い小説…

Cahier(「鏡子の家」・現実・退職)

*最近は三島由紀夫の長大な「鏡子の家」(新潮文庫)を読んでいる。同時代の批評家から冷遇されたと伝えられる作品だけに、退屈しないかと心配しながらページを開いたが、そんなに悪しざまに貶されるべきものだとは思わない。ただ「金閣寺」という緊密な構…

Cahier(悲劇と日常・事実と思想・類型と独創)

*三島由紀夫の「金閣寺」(新潮文庫)の再読を終えて一箇月足らずだが、未だに鮮明な印象の断片が頭の中を通り過ぎていく。幾らでも書くべきことは残っているように思うが、何処から切り込むべきか、どういう筋道で侵入すべきか、巧く纏められない。その纏…

Cahier(依存・小利口・堕落・暗部)

*他人に依存するのではなく、自分の外側に接続されている諸々の外在的な権威に頼るのでもなく、自分自身の力と判断で、責任を引き受けて生きること、他人の存在を言い訳に用いて自分の信念や欲望を圧殺しないこと、不満の原因を他人に求めないこと、言い換…

Cahier(共依存・執著・渇愛)

*「共依存」という言葉がある。元々はアルコール依存症の患者とその家族との癒着した関係性の病態を指す為に、看護の現場から案出された概念であるらしい。その語義を極めて大掴みに咬み砕いて言えば「特定の人間関係に対する過剰なアディクション(addicti…

Cahier(自立・恐懼・隠遁)

*自立するということは何も、あらゆる規範を踏み破って手前勝手な欲望を殊更に強調し、他人の事情を一切斟酌せずに放縦に振舞うということではない。無論、自立するということは、他人の組み立てる種々の思惑に押し流されない強固な判断力や思考力の構築を…

Cahier(道徳・良識・保守)

*自分の感じたことや考えたことに固執するのは、偏屈ということだ。そして偏屈であったり強情であったりすることは、一般論としては世間から余り好意的な眼差しを向けられない生活の態度である。自分の考えや意見、信念、主張に固執して、他人の忠告や訓誡…

Cahier(感情の濃縮・外界の不在・匿名性)

*感情の濃縮は、逃れ難い人間関係において生じる。時に相手に対する殺意にまで高まるほどの劇しい情念は、容易く着脱し得る合理的な人間関係の内部では充分に醸成されない。成程、確かに世の中には、通り魔による無作為な殺人や暴行の類が頻発している。だ…

Cahier(有限・不可能・祈り)

*永遠の愛とは、恋の堕落した形態であると、試しに言い切ってみる。つまり、いつか必ず訣別の刻限を迎えるものとされている筈の恋を、永遠に持続させようとする不穏当な欲望が、永遠の愛という崇高で空虚な理念を、一つの宗教的な象徴のように掲揚してみせ…

Cahier(視線・他者・内在的対話)

*「見る」という行為、必ずしも完全に主体的であるとは言えないが、往々にして人間の主体性の積極的な発露であると考えられている「見る」という行為には、複雑な政治的含意が備わっている。そこには「権力」というものの痕跡が露骨に刻み込まれている。 今…

Cahier(幸福・未来と現在・自律)

*「幸福」というものには誰しも漠然たる憧れを懐き、少なくとも不幸のどん底を這い回るよりは幸福で安楽な生活を送りたいと通俗的な願いを懐くのは庶民の慣習である。無論、私だって好んで不幸な、悲惨な境涯へ自ら歩みを進めたいとは思わないし、苛酷な修…

Cahier(自己支配・組織・不純な悪人)

*他人を支配しようとする心、言い換えれば「権力」に対する欲望は、様々な仮面と擬装を伴って、人間の社会の到る所に厭らしく浸潤している。権力の機能は、多くの場合、何らかの尤もらしい大義名分を隠れ蓑に纏い、如何にも道徳的な口実を悪用して、あらゆ…

Cahier(自由・面従腹背・闘う勇気)

*最近、改めて「自由」というものの価値に就いて考える時間が多い。 「自由」という言葉を通じて、私が指し示したいと思っている対象は「何でも自分の思い通りにしたい」という風な、幼稚で独善的な欲望ではない。そもそも無数の時間的、空間的、物理的、社…

Cahier(「金閣寺」再読・紀州神話・作家の実存)

*三島由紀夫の「沈める滝」(新潮文庫)を読了したので、今は同じ作者の誉れ高き代表作である「金閣寺」(同上)を再読している。きちんと読み返すのは十年振りではないだろうか。改めて、その緊密で観念的な文章の厳密な彫琢に惚れ惚れしている。 三島が「…

Cahier(「沈める滝」・作家主義・mysticism)

*三島由紀夫の「潮騒」を読み終えて感想文を書いたので、今日から同じ作者の「沈める滝」(新潮文庫)を繙き始めた。未だ冒頭の数ページしか読んでいないので、具体的な感想など書きようもないが、主役の城所昇の人物像には「禁色」の南悠一と「青の時代」…

Cahier(新年度・会者定離・nostalgia)

*明日から、新年度が本格的なスタートを切る。何処の会社でも家庭でも組織でも、卒業の別れ、異動や転職の別れ、移住の別れを一通り嘆いたり悲しんだりして、新しい生活への心構えを整えた後の、愈々の門出の場面が数多く演じられるのだろう。私の勤め先は…

Cahier(禁忌・罪悪・実存)

*この世界には、数え切れぬほど多くの「禁忌」が存在し、人間の心理と生活を縦横に縛っている。昨年の暮れから読んでいる三島由紀夫の「禁色」には、女を愛することの出来ない美青年の苦悩が描かれているが、例えば「同性愛」というものに対する社会的な禁…

Cahier(蹉跌・苦悩・里程標)

*昨夜、仕事の後、退職を希望する部下の社員と酒を交えて話をした。強く慰留しようという意思を持って、その場に臨んだ訳ではない。ただ、自分の経験を踏まえて、幾つかアドヴァイスを試みた。 その女の子は、典型的に仕事が出来ないタイプである。第一に自…

Cahier(「神」という、或る垂直な関係性)

*夏目漱石は百余年前の昔、「草枕」の冒頭に「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい」という著名な文句を書きつけた。一世紀が経っても、地上の事情は変わらない。大半の問題は人と人との狭間で起こ…

Cahier(内在性・外在性・parallax)

*物事は、外側から眺める場合と内側から見凝める場合とでは、全く見え方が異なるものである。それを単純に「客観=主観」という言葉で表現することが適切かどうかは知らない。ただ、一般的には物事を客観的な目線で捉えることの重要性が強調されがちである…

Cahier(常住・煩悩・一期一会)

*永遠を願うことは、人間の切なる祈りである。それが不可能な願いであることは、長い人類の歴史上で、無数の残酷な実例が悉く立証しているにも拘らず、未だにその願いが死滅する徴候は発見されていない。誰もが不可能であることを予感しながら、切実な感情…

Cahier(「永遠」と「所有」の生理学)

*「所有」という観念は常に、もう一つの重要で根源的な理念、即ち「永遠」という観念との間に密接な関係性を有している。永遠を願うとき、人は特定の状況、特定の事象、特定の関係が、最も望ましい瞬間の状態で未来永劫、固定的に維持されることを劇しく希…

Cahier(所有の心理的側面)

*何かを所有するということ、それは随分と有り触れた、在り来たりの事態のように感じられるけれども、その仕組みは、考えてみれば随分と曖昧模糊としている。私が何かを所有するとき、その権利はどのような仕組みや約束事の上に成り立っているのだろうか。…

Cahier(情念という怪物)

*感情というものは、非常に厄介な代物で、一種の寄生虫のような性質を持っている。宿主の意思とは裏腹に、それ自体の独特の原理に従って勝手に動き回り、理性の命令に容易く反抗し、直ぐに逃げ道を探し当てようと悪足掻きを繰り返す。 感情という生き物は無…

Cahier(渇愛・結婚・永遠性)

*恋愛の情熱ほど、結婚の論理に敵対的なものは他に存在しない。この命題は、様々な現代的誤解に彩られて、なかなか直視されずにいる。多くの人々は、結婚というものは恋愛の延長線上に存在していると素朴に信じ込んで、その素朴な信仰の秘められた実情を疑…