サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧

Cahier(年の瀬・ティマイオス・叡智)

*年の瀬である。クリスマスの商戦を了え、漸く人心地がついたと思ったら、今度は年末年始の買い出しで、売り場はがやがやと絶えず騒がしい。食品の小売業にとっては、年間で最大の繁忙期であり、御用納めの酒肴を浮かれながら買い漁る背広を纏った善男善女…

プラトン「テアイテトス」に関する覚書 4

プラトンの対話篇『テアイテトス』(光文社古典新訳文庫)に就いて書く。 「知覚=アイステーシス」(aisthesis)は、絶えざる「生成」の裡に育まれる刹那的な現象である。知覚する主体と知覚される主体との一時的な癒合によって、その都度、人間の精神の内部…

プラトン「テアイテトス」に関する覚書 3

プラトンの対話篇『テアイテトス』(光文社古典新訳文庫)に就いて書く。 「テアイテトス」の前半で問われるのは「知識=知覚」という公理は正しいのかどうかという論題である。それに伴って「ディアレクティケー」(dialektike)の法廷に登場するのが、ヘラク…

Cahier(「思想」の多様性 / 「真理」の複数性)

*プラトンの対話篇に疲弊して、彼是と言い訳を弄しながら、三島由紀夫の小説の読解へ復帰したのに、何だか見苦しい遁走を図ったような後ろ暗さが否めず、結局鞄の中に「テアイテトス」の文庫本を舞い戻らせた。プラトンの哲学が命じる観照的な「徳性」の規…

審美的なデミウルゴスの肖像 三島由紀夫「女神」

三島由紀夫の小説「女神」(『女神』新潮文庫)に就いて書く。 この作品は、妻を「女神」に仕立て上げようとして中途で挫折し、今度は娘を「女神」として完成させるべく、異様な審美的情熱を燃え立たせる男の物語である。彼が「女神」という観念に充塡する感…

Cahier(「哲学」と「文学」)

*プラトンの対話篇を読むことに疲弊して、三島由紀夫の繙読を再開しつつある。『テアイテトス』(光文社古典新訳文庫)の抽象的思弁の難解さに面食らって、特に後半に出現する幾何学的な論証の抽象性が一向に咀嚼出来ず、改めて自分の劣等な脳味噌に辟易し…

観照的主体への怨讐 三島由紀夫「月澹荘綺譚」

プラトンの『テアイテトス』(光文社古典新訳文庫)を繙読するのに草臥れたので、久々に三島由紀夫の小説に就いて書く。取り上げるのは「月澹荘綺譚」(『岬にての物語』新潮文庫)である。 この小説は、三島由紀夫という作家が繰り返し自作の主題に挙げてき…

プラトン「テアイテトス」に関する覚書 2

プラトンの対話篇『テアイテトス』(光文社古典新訳文庫)に就いて書く。 「知識とは何か」という聊か抽象的な設問は、哲学という根源的思考の領域においては、安易に忌避することの出来ない難問である。「知識」という言葉自体は、我々の日常的な生活に悠然…

「誘惑」に就いて

私の職場は女性が多く、色恋沙汰に関する悩み事や様々な見解などが日常的に飛び交っている。結婚や出産も含めて、そうした性愛的な事柄に関するスタンスは人によって千差万別であり、趣味嗜好も実に多様である。先日は「色気とは何か」ということが話題に上…

プラトン「テアイテトス」に関する覚書 1

プラトンの対話篇『テアイテトス』(光文社古典新訳文庫)に就いて書く。 「テアイテトス」の前半は、プロタゴラスの教説に象徴される「知識=知覚」の等式を反駁することに充てられている。この等式と、そこから導かれる「相対主義」(relativism)の言説が、…

Cahier(relativism and alternative facts)

*最近は専らプラトンの対話篇を読んでいる。断続的に取り組んでいた『国家』(岩波文庫)の繙読を漸く了えて、その後は『パイドロス』(岩波文庫)に進み、現在は『テアイテトス』(光文社古典新訳文庫)に着手している。 プラトンの厖大な対話篇が綴られた…

プラトン「パイドロス」に関する覚書 2

プラトンの対話篇『パイドロス』(岩波文庫)に就いて書く。 「パイドロス」の主要な議題は所謂「弁論術」(techne rhetorike)である。前半において詳細に論じられた「エロス」(eros)に関する相互に対極的な二つの学説は、弁論術の恣意的で詭弁的な性質を露わ…

プラトン「パイドロス」に関する覚書 1

プラトンの対話篇『パイドロス』(岩波文庫)に就いて書く。 「パイドロス」の前半において熱心に追究される主題は「恋愛」(eros)である。尤も、この「恋愛」に関する精密な定義を示すことが、必ずしも当座の目的であるとは言えない。恐らくプラトンの意図は…