サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

2017-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「死」という毒薬を弄ぶ男 三島由紀夫「盗賊」

先日、三島由紀夫の処女長篇小説『盗賊』(新潮文庫)を読了したので、感想を認めておきたい。 「仮面の告白」に先立って発表された「盗賊」は、三島由紀夫の遺した厖大で華麗な文業の経歴の中で、余り脚光を浴びない位置に佇んでいる作品ではないかと思う。…

Cahier(「盗賊」・文体・「作品」という芸術的単位)

*三島由紀夫の作品を集中的に読破するという俄仕立ての計画は、今のところ生温い速度で進んでいる。「仮面の告白」「愛の渇き」を読み終えて、今は三島の処女長篇と定義されている「盗賊」(新潮文庫)をのんびりと繙読しているところである。 私は漠然と「…

苦痛への欲望、或いはタナトス(thanatos) 三島由紀夫「愛の渇き」

三島由紀夫の「愛の渇き」(新潮文庫)を読了したので、感想を認めておく。 この作品の全篇に行き渡っている、或る陰鬱な雰囲気の由来を、一言で名指すのは困難な業である。何もかもが皮肉の利いた、底意地の悪い文章によって抉り取られ、無条件の肯定に晒さ…

Cahier(日常性・演技・滅亡・美学的理念)

*引き続き、三島由紀夫の「愛の渇き」(新潮文庫)を少しずつ読み進めている。 以前に書いた記事の中で、三島由紀夫の作品に表現された精神的形態を「演劇的メンタリティ」という言葉で括ってみた。私にとっても未だ、漠然とした概念に過ぎないのだが、良く…

Cahier(三島由紀夫・齟齬・仮装・心理)

*三島由紀夫の「仮面の告白」(新潮文庫)を先日読み終えたので、今は同じ作者の「愛の渇き」(同上)を繙読している。如何にも三島らしい、皮肉の利いた観念的な措辞が、じわじわと此方の精神に染み込んで来るような、苦い作品である。 「仮面の告白」は、…

「正常さ」への切迫した欲望 三島由紀夫「仮面の告白」

三島由紀夫の『仮面の告白』(新潮文庫)を読了したので、その感想文を認めておく。 三島の出世作であり、その代表作の一つにも計えられる「仮面の告白」には、所謂「処女作」に関する使い古された通説が見事に反映されている。つまり、或る作家の処女作には…