サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

Cahier(年の瀬・悪疫・逆境)

*光陰矢の如し、知らぬ間に年の瀬を迎え、新年が直ぐ傍に迫っている。恐らく新型コロナウイルスの世界的蔓延によって歴史にその名を色濃く刻まれるであろう2020年、人々の生活が事前に予測されない重大な変化と転換を強いられた一年、それが瞬く間に終わろ…

社会的盟約の擁護 ジークムント・フロイト「幻想の未来/文化への不満」 1

オーストリアの輩出した偉大な精神科医、ジークムント・フロイトの晩年の論文を収めた『幻想の未来/文化への不満』(光文社古典新訳文庫)に就いて、感想の断片を認める。 フロイトによって創始された「精神分析」(psychoanalysis)の壮大な体系は今日、数多…

「美徳/幸福」を巡る、華麗なる論争 ロレンツォ・ヴァッラ「快楽について」 3

十五世紀イタリアの人文主義者ロレンツォ・ヴァッラの著した対話篇『快楽について』(岩波文庫)を読了したので感想文を認める。 この対話篇の前半は、エピクロスの思想を信奉する登場人物ヴェージョによるストア学派の教説に対する論駁に充てられている。し…

「美徳/幸福」を巡る、華麗なる論争 ロレンツォ・ヴァッラ「快楽について」 2

十五世紀イタリアの人文主義者ロレンツォ・ヴァッラの『快楽について』(岩波文庫)と題された対話篇を巡って感想の断片を電子的画面に刻み込む。 ストア学派は如何なる外在的条件にも拘束されない不動の恒常的自己の確立を目指し、彼らの言葉でapatheiaと称…

「美徳/幸福」を巡る、華麗なる論争 ロレンツォ・ヴァッラ「快楽について」 1

目下、十五世紀イタリアの人文主義者ロレンツォ・ヴァッラの『快楽について』(岩波文庫)を繙読している。以下に、その感想の断片を認める。 ロレンツォ・ヴァッラが本書を著した意図は、当人の序文において明確に示されている。キリスト教の擁護とストア学…

内面的自由の保護 ジョン・ロック「寛容についての手紙」

十七世紀の暮れに西欧で出版されたジョン・ロックの『寛容についての手紙』(岩波文庫)を読了したので、感想文を認める。 私がこの書物を繙いたのは、その直前にルキウス・アンナエウス・セネカの『怒りについて』(岩波文庫)を読んだことが影響している。…

Cahier(理性の失調)

*古代ギリシアの代表的な哲学者であるプラトンは、その長大な対話篇「国家」において「魂の三区分」と呼ばれる考え方を提示している。普遍的な真理を観照する理性の働きを、人間の霊魂の本質的且つ優越的機能に定めたプラトンは、理智によって「意志=気概…

艱難と克己 セネカ「怒りについて」 3

古代ローマの文人政治家であったルキウス・アンナエウス・セネカの『怒りについて』(岩波文庫)の感想を書き留める。 本書の主菜に当たる「怒りについて」と題された書簡体の長文は、人間の懐く「情念」(affectus)の中で最も狂暴で醜悪な「怒り」の弊害に就…

Cahier(瞋恚・誹謗・希望)

*最近は蝸牛の速度で、セネカの『怒りについて』(岩波文庫)を読んでいる。読了したら改めて私的な感想を纏める積りなので、内容の詳細には立ち入らないが、セネカは「怒りについて」の全篇を通じて、只管に「怒り」という破壊的な情念の悪しき影響を、多…