サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

サラダ坊主風土記

サラダ坊主風土記 「勝浦・小湊・大多喜」 其の三

旅行二日目の朝も早起きをした。ビュッフェ形式の朝食を摂り、部屋に戻って手早く仕度を整え、ホテルの玄関で記念写真を撮ってから、マイクロバスで安房小湊駅まで送ってもらう。途次、土産物屋と和菓子屋に立ち寄って買い物をした。地元の銘菓である「いろ…

サラダ坊主風土記 「勝浦・小湊・大多喜」 其の二

外房線の安房小湊駅は、鴨川市に属する鄙びた港町に鎮座している。駅前には巨大なセブンイレブン(天津小湊店)があり、恐らく通常のコンビニの範疇を越えて、地域に密着したスーパーマーケットの機能も兼ねているのではないかと思われる。見るからに儲かっ…

サラダ坊主風土記 「勝浦・小湊・大多喜」 其の一

過日、妻子に義母を加えた四人で南総地方へ一泊二日の旅行に出掛けたので、その覚書を認める。 此度の企図の発端は、幸運にも妻が引き当てた「ディスカバー千葉」の宿泊者優待キャンペーンであった。一人当たり一泊最大五千円の割引が受けられる観光促進の企…

サラダ坊主風土記 「銚子・犬吠埼」 其の三

銚子旅行の二日目、ホテルのビュッフェ形式の朝食を頂き(コロナの感染防止策の一環として個人別の紙製のトングが用意されていた)、チェックアウトの手続きを済ませてタクシーを呼んでもらった。ホテルの駐車場の一隅に岩礁を模した露天の水槽があり、数匹…

サラダ坊主風土記 「銚子・犬吠埼」 其の二

銚子電鉄の古めかしく老朽化した車両に揺られ、我々は終点の一つ手前、犬吠の駅に向かって出発した。娘は疲れが出たのか、私の膝に凭れて寝入ってしまった。車内には広告の代わりに、或いは広告を兼ねて、銚子の醤油醸造や漁業の歴史に関する説明が掲示され…

サラダ坊主風土記 「銚子・犬吠埼」 其の一

家族で一泊二日の銚子旅行に出掛けたので、その記録を簡潔に書き留めておく。 新型コロナウイルスの感染拡大以来、人間の移動は制限され、旅客は著しく減少し、東京駅の構内に立地する私の配属先の店舗も、売上の激減に苦しんでいる。今夏の盆休みの新幹線指…

サラダ坊主風土記 「金沢・加賀温泉郷」 其の三

金沢旅行の二日目も、一帯は朝から非の打ち所のない快晴の蒼穹に恵まれた。ビュッフェ形式の在り来たりな朝食を済ませ、チェックアウトの手続きを終えて午前の戸外へ出ると、既に気温は三十度を超していた。燦然たる光に焼かれながら、地下道を経由して金沢…

サラダ坊主風土記 「金沢・加賀温泉郷」 其の二

金沢の「ひがし茶屋街」を訪ねるのは生涯で二度目である。浅野川に架かる大橋を渡り、古びた町家の建ち並ぶ路地を、日盛りの陽光に焼かれながら緩々と進んでいく。角を折れると、一寸した広場のような空間に導かれた。「箔一」という名の、金箔を用いた土産…

サラダ坊主風土記 「金沢・加賀温泉郷」 其の一

過日、妻子を伴って北陸の中心都市である金沢と、福井との県境に近い加賀温泉郷へ旅行したので、その見聞を備忘の為に記録しておきたいと思う。 我々夫婦が金沢へ赴くのは此度で二回目である。前回の旅行で金沢には好意的な印象を覚えていた。一回り縮約され…

サラダ坊主風土記 「盛岡・小岩井」 其の五

そのホテルの二階には露天風呂を含めた大浴場があり、その周辺が「おまつり広場」と称する空間になっている。夜に限って、祭りを模した射的やスーパーボール掬いなどの出店が並び、イベントスペースではビンゴ大会や和太鼓の演奏などが行なわれるのである。 …

サラダ坊主風土記 「盛岡・小岩井」 其の四

小岩井農場の涼しい喫茶店で軽食を済ませた後は、土産物売り場を見物して幾つか日持ちのする菓子を購い、腕時計の文字盤に急かされるように正門を出て、待合室で路線バスの到着を待った。予定よりも一本早い、盛岡駅まで直行する便である。 行きの便はマイク…

サラダ坊主風土記 「盛岡・小岩井」 其の三

盛岡旅行の二日目は、小岩井農場へ遊びに行く計画であった。朝の九時に盛岡駅の東口を発車する路線バスに搭乗せねばならない。早起きしてホテルでビュッフェ形式の凡庸な朝食を摂り、チェックアウトの手続きを済ませて、晴れ渡った午前の街並へ繰り出す。 バ…

サラダ坊主風土記 「盛岡・小岩井」 其の二

岩手銀行の旧本店は、中津川に架かる中の橋の畔にあり、盛岡城跡公園の対角に位置している。それほど巨大な建物ではない。東京駅の丸の内を連想させる赤煉瓦の造作である。 路上の劇しい暑さから逃れるように、我々は薄暗い館内へ入り、入場券を買い求めた。…

サラダ坊主風土記 「盛岡・小岩井」 其の一

過日、妻子を伴って二泊三日の岩手旅行へ出掛けて来た。その備忘録を認めておく。 私にとって岩手県は未踏の地である。そもそも東北地方に余り縁がなく、昨年の夏に訪れた仙台も、初めて足を踏み入れた場所であった。旅先の選定に際して、未踏の地であるとい…

サラダ坊主風土記 「花見川」

先日の休みに、用事があって妻と娘と共に区役所へ行った。天気が良かったので、少し風は冷たいが、自転車で行った。京成とJRの線路を渡る地下道を潜り、税務署の近くのステーキハウスで遅めの昼食を取ってから、平坦な道を走って、花見川を越えた。 用事自…

サラダ坊主風土記 「佐原・香取神宮」

珍しく日曜日に休みを取った。特に狙った訳ではない。普段なら人手が足りなくなる日曜日に、たまたま人手が揃っただけの話である。娘も未だ小さいので、特に旗日の休みに固執する理由もない。寧ろ週末は何処へ出掛けても混み合っていて、時間と労力を空費す…

サラダ坊主風土記 「千葉公園」

一昨日は仕事が休みで、妻は独り美容院に出掛けた。珍しく娘と二人きりである。単独の子守りを仰せ付かる機会は殆どない。昼飯を食べさせてから、晴れ間が広がってきたので、娘を連れて散策へ出掛けることにした。 とりあえず新装開業したばかりの千葉の駅ビ…

サラダ坊主風土記 「千葉」(一日平均乗車人員数の比較)

今日、JR千葉駅の真新しい駅ビルがオープンした。未だ実地には中身の作りを見学していないが、人伝に聞いた話では凄まじい人出で、午前中は入場制限が掛かっていたらしい。家の郵便受けに投じられていた広告を眺める限りでは、なかなか有名なブランドが揃…

サラダ坊主風土記 「仙台・松島・塩釜」 其の六

「塩竈すし哲」本店は、本塩釜の駅に程近いビルの中に入っていて、三階まで客席があり、我々は二階の座敷へ通された。回転寿司ではないので、幼児を連れて入れるのか不安であった。実際、一階のカウンター席は鈴生りの客で、板前が三人ばかり忙しそうに働い…

サラダ坊主風土記 「仙台・松島・塩釜」 其の五

円通院を見学した後、日暮れが迫ってきたので、我々はベビーカーを押し、トランクを引き摺って、海岸沿いの遊歩道を通って宿へ向かうことにした。途中、福浦島へ渡る朱塗りの大橋の入口を掠めた。妻に折角だから渡ろうかと誘われたが、疲れていたので取り止…

サラダ坊主風土記 「仙台・松島・塩釜」 其の四

我々は遊覧船の後方にあるデッキに立って、燃油の香りと強い潮風に包まれながら、曇天の松島湾を周遊した。生憎、娘は桟橋で乗船時刻を待つ間に眠ってしまった。混み合った空間で甲高く泣き叫ばないでくれるのは良いことだが、肝心のタイミングで寝入ってし…

サラダ坊主風土記 「仙台・松島・塩釜」 其の三

仙台旅行二日目の目的地は、日本三景の一つ、松島であった。 早起きしてホテルのビュッフェで朝食を取り、小雨の降り頻る街路を、仙台駅へ向かって歩いた。月曜日で、ホテルの前を行き交う人々は、休暇気分の暢気な我々とは異なり、足早に職場へ急いでいるよ…

サラダ坊主風土記 「仙台・松島・塩釜」 其の二

仙台市地下鉄東西線「大町西公園駅」までの道程は、有り触れた住宅街であった。少なくとも、千葉からの旅行者がわざわざ徒歩で徘徊する必要のある地域ではなかった。だが、そういう無意味な散策にも、旅行の醍醐味というものは潜んでいるというのが、私の予…

サラダ坊主風土記 「仙台・松島・塩釜」 其の一

昨晩、二泊三日の仙台旅行を終えて千葉へ帰ってきた。備忘録を認めておく。 仙台は、数年前に訪れた金沢と似通った雰囲気のある土地だった。江戸時代、雄藩として栄えた城下町としての歴史を持ち(加賀藩前田家の金沢城・仙台藩伊達家の青葉城)、文化的な成…

サラダ坊主風土記 「両国」

先日、妻と二人で久々に外出した。幼い娘は、義母が一日預かって面倒を見てくれた。有難いことである。そういう協力がなければ、小さな子供を抱えた夫婦が二人きりで外出する機会を得ることは、とても難しい。 そういう貴重な機会であるのに、事前に綿密な計…

サラダ坊主風土記 「佐倉」

此間の土曜日に、家族と共に佐倉ふるさと広場で開催中のチューリップフェスタというイベントに出掛けてきた。 本当は千葉市の猪鼻城(「亥鼻」とも書くらしい)へ桜でも見に行こうかと、幕張から千葉へ向かう京成電車に乗り込んだのだが、中吊りの広告でチュ…

サラダ坊主風土記 「丸の内」

今日は弟の結婚式に出席してきた。丸の内の、皇居の近くにある瀟洒なホテルで盛大に挙行された華燭の典は、天候にも恵まれ、新郎新婦の晴れやかな門出に相応しい一日であったように思う。 我が家には一歳に満たぬ幼い娘が一人あり、妻は親族ゆえに留袖の着付…

サラダ坊主風土記 「安房鴨川」 其の四

今回の記事で連載は最後になる(予定)。 saladboze.hatenablog.com saladboze.hatenablog.com saladboze.hatenablog.com 鴨川シーワールドは、少なくとも関東地方ではそれなりに名前の知られたレジャー施設であり、名物のシャチのパフォーマンスも観覧した…

サラダ坊主風土記 「安房鴨川」 其の三

再び紀行文の続きを書く。 saladboze.hatenablog.com saladboze.hatenablog.com 総武線快速列車の直通運転の終着駅であり、一つの重要な「境界」である上総一ノ宮駅を出発すると、次第に車窓越しの景観は仄かな南国の雰囲気を知らぬ間に纏い始めた。その薄ら…

サラダ坊主風土記 「安房鴨川」 其の二

先日の記事の続きを書く。 saladboze.hatenablog.com 前置きばかり長くなって恐縮だが、自分の好きなように書かせてもらいたいと思う。海浜幕張駅から、京葉線を経由して外房線に乗り入れる特急「わかしお」に乗り込み、私たち家族は房総半島の南東部に位置…