サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

2015-01-01から1年間の記事一覧

暴力と哀傷 北野武「HANAーBI」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 長い間更新を怠っておりました。申し訳ありません。 今日は北野武監督の「HANA-BI」という映画について書きます。 御存知の通り、北野監督はツービートという漫才コンビから出発して、今では世界的な映画監督の一…

自己解体への欲望 古井由吉「雪の下の蟹」

どうもサラダ坊主です。 先日、古井由吉の「雪の下の蟹」という小説を読みました。 作者の金沢時代の体験に題材を取った小品で、取り立ててダイナミックな筋書きがある訳でもない短い小説ですが、独特の読み応えがあり、文章も地味に富んでいます。 金沢とい…

「森」の論理と「ヒト」の論理 宮崎駿「もののけ姫」

どうも皆様こんにちは。サラダ坊主です。 日本が誇るアニメーションクリエーターとして国際的な知名度を持つ宮崎駿氏が「風立ちぬ」を最後に現役を退いてから、早くも2年以上の月日が流れました。 「となりのトトロ」や「魔女の宅急便」という牧歌的な作品…

映画におけるストイシズム / 「原作」という呪わしき理念

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 ここ数年、私は劇場へ足を運んで映画を見ることが多くなりました。映画というのは本来「映画館」で鑑賞されることを想定して作られているので、テレビやDVDで見ると、今一つ物足りなく感じることがあります。何より、…

「絵」で「物語」を表現するということ 井上雄彦「スラムダンク」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 今夜は言わずと知れた国民的大ヒットマンガ「スラムダンク」(累計売上部数は国内のみでも1億2000万部を優に突破しています)について書きます。 既に無数の読者が熱い思いをこめて、この作品に言及しておられると…

融通無碍の文体 夏目漱石について

どうもこんにちは、サラダ坊主です。 数日間更新をサボっておりました。 本日は私の敬愛する夏目漱石について書きます。 夏目漱石って、何だか堅苦しいイメージをお持ちの方も多いと思いますが、実際に読んでみると決してそんなことはありません。何しろ明治…

光と影の叙事詩 「ファイナルファンタジーⅦ」 2 ゲーム性を損なうほどのグラフィック志向

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 昨日のエントリーの続きを書きます。 長い長い前置きで終わってしまったのですが、それを踏み台として「FFⅦ」について思うところを書かせていただきます。 私は「FFⅦ」を傑作と信じて疑わないのですが、それはこの作…

光と影の叙事詩 「ファイナルファンタジーⅦ」 1 「映画的なもの」への志向性

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 世の中には、様々な芸術的ジャンルというものがあります。 小説、詩歌、映画、演劇、舞踏、音楽、絵画、彫刻、その他、計え上げれば実にキリがありません。これらのジャンルはそれぞれ、独自の歴史的経緯を経て、現在の…

詩歌の断片性(「意味」と「無意味」の拮抗)

どうもこんにちは、サラダ坊主です。 突然ですが、皆さんは所謂「詩歌」というものを読んだり書いたりしたことはありますか? 国語の授業で作らされたという方もいらっしゃるでしょうし、趣味として短歌や俳句を作って結社などで見せ合ったり、ネット上で交…

自意識のもたらす笑いと狂気 町田康「くっすん大黒」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 本日は町田康の「くっすん大黒」について書きます。 元々はパンクロッカーとして、後に破天荒な詩人として世に出た町田氏は、この「くっすん大黒」で1996年に小説家としての活動をスタートさせます。爾来、旺盛な執…

匿名化する世界 安部公房「燃えつきた地図」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 今回取り上げるのは、安部公房の「燃えつきた地図」です。 作者の経歴については例によってウィキペディアを抜粋。 安部 公房(あべ こうぼう、1924年(大正13年)3月7日 - 1993年(平成5年)1月22日)は、日本の小説家…

歴史という「嘘」 小川一水「天冥の標」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 鬱陶しい秋雨が続きますが皆様いかが御過ごしでしょうか。 本日のお題は小川一水の超巨編SF小説「天冥の標」です。未だ完結しておりませんが、その圧倒的かつ壮大な構想力、扱われるファクターの幅広さ、入り組んだ迷…

「過去の罪悪」は乗り超えられるのか 和月伸宏「るろうに剣心」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 今日は言わずと知れた傑作マンガ「るろうに剣心」について書きます。 幕末から明治初頭にかけての日本を舞台にした剣豪チャンバラマンガで、未だに根強い支持を受けている作品です。この作品はいかにも少年マンガ的な格…

美=虚無の方程式 三島由紀夫「金閣寺」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。今夜は三島由紀夫の代表作である『金閣寺』(新潮文庫)に就いて書きたいと思います。 戦後間もない昭和二十五年の夏に起きた鹿苑寺(金閣寺)への放火事件に題材を取ったこの作品は、恐らく綿密な取材の上に成り立ってい…

「恋愛」と「結婚」の境界線

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 先日のエントリーでも少し触れましたが、私には離婚経験があります。今時、離婚なんて少しも珍しくない話となりましたが、その決断に当たっては親から強い反対を受けました。相手の方が私に対する愛情を失ったと明言した…

究極の文民統制 有川浩「図書館戦争」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 今日は岡田准一と榮倉奈々を主役に迎えた実写映画バージョンも有名な「図書館戦争」を取り上げます。原作は有川浩の小説で、現在は角川文庫に収められています。 単行本は本屋さんで幾度も見かけていたのですが手に取ら…

書くことは「断層」から生まれる

どうもサラダ坊主です。 私は小学校ぐらいのときから文章を書くことが好きで、ちまちまと雑文を書き散らして参りました。ジャンルは様々で、シャーロック・ホームズや江戸川乱歩の「少年探偵団」を模倣した推理小説を試みたり、宇宙を舞台にした壮大なSF(…

「世界」ではなく「社会」のために戦え ゆうきまさみ「機動警察パトレイバー」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 今日は私が最も愛するマンガと言っても過言ではない、ゆうきまさみの「機動警察パトレイバー」について語りたいと思います。 この作品はメディアミックスの先駆け的な作品で、マンガ、テレビアニメ、OVA、劇場版アニ…

社会的分業について

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 今朝、仕事へ行く前に職場の近くの喫茶店で簡単な朝ごはんを食べようと思って並んでいたら、私の前に立っていたおばさんが店員に「紙袋ちょうだい」と言ってました。コーヒー豆とかを纏めて買ってたので、紙袋を要求する…

「結婚・子育てはコスパが悪い」という言説について

どうもこんにちは、サラダ坊主です。 週刊はてなブログのエントリーを見ていたら、こんな特集記事が出ていました。 「結婚・子育てのメリット・デメリット」について、ブロガーたちの意見が寄せられています。シルバーウィークに「結婚」について考えてみま…

強烈なるアジテーションの浸透力 寺山修司「書を捨てよ、町へ出よう」(角川文庫版)

今週のお題「人生に影響を与えた1冊」 どうもサラダ坊主です。 今週のお題が「人生に影響を与えた1冊」ということに偶然気づきましたので、早速投稿させていただきたいなと思います。 私は小さいころから読書が好きで、そのわりに濫読と言えるほどの量は読…

断片的=綜合的批評の強度 柄谷行人「意味という病」

どうもこんばんは、毎度おなじみサラダ坊主でございます。 平日の夜に眠い目をこすって起きていらっしゃる不健康な皆様方へ向けて、一筆啓上させていただきたく存じます。 本日も文学系のエントリーを一本アップしようと思います。 取り扱いますテーマはずば…

凄絶な悪意と「被害者たること」への欲望 大江健三郎「芽むしり仔撃ち」

どうも皆さんこんにちは、船橋の片隅で慎ましい生活を送っているサラダ坊主です。 本日はノーベル賞作家の大江健三郎が書いた初期の代表的な長篇小説について、エントリーをアップさせて頂きます。下記、例によってウィキペディアから作者の大まかなプロフィ…

世捨て人の受難 車谷長吉「赤目四十八瀧心中未遂」

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 すっかり千葉は天気が良くなりましたが、鬼怒川の決壊に続いて、宮城県でも豪雨の影響で渋井川の決壊が発生したとのこと、背筋の凍るような話です。 東日本大震災で発生した大津波からの復興も十分でないのに、東北地方…

小説を読むということについて / 存在しないものの回想

どうもこんにちは、サラダ坊主です。 茨城県や栃木県で大規模な水害が発生したのが嘘のように、千葉は晴れ渡っていい天気ですね。 先日立て続けに「村上春樹論」と「坂口安吾論」という割とハードな内容のエントリーをアップしたので、今日はもうちょっと気…

野心と放心 「淪落」という倫理について 坂口安吾「風と光と二十の私と」 2

どうもサラダ坊主です。 坂口安吾論の後篇を矢継ぎ早にアップします! 私は戦きながら、然し、惚れ惚れとその美しさに見とれていたのだ。私は考える必要がなかった。そこには美しいものがあるばかりで、人間がなかったからだ。実際、泥棒すらもいなかった。…

野心と放心 「淪落」という倫理について 坂口安吾「風と光と二十の私と」 1

どうもこんばんは、船橋の片隅からサラダ坊主が御挨拶致します。 栃木県に特別大雨警報が発令され、関東甲信越はえらい騒ぎですね。 明日から長野へ一泊二日で出かけるというのにバッドタイミング。 さて、今夜は先日の「村上春樹論」に続きまして、「坂口安…

なぜ青年はナイフを欲するか 村上春樹「ハンティング・ナイフ」について 3

サラダ坊主です。 これで完結です! 三 「家族」というシステム この作中で最も理解の難渋する箇所は、青年の語る「システム」に就いての科白であろう。それは抽象的で、観念的で、具体的に如何なる事実を物語る言葉なのかが、不明確に示されている。言い換…

なぜ青年はナイフを欲するか 村上春樹「ハンティング・ナイフ」について 2

どうもサラダ坊主です。 前回のエントリーの続きです。 二 なぜ異邦人だけが登場を許されるのか この作品の舞台となる土地の固有名は、作中においては明示されていない。然し、作中を横切る様々な記述の断片を縒り合わせて、或る仮説を組み立てることは、不…

なぜ青年はナイフを欲するか 村上春樹「ハンティング・ナイフ」について 1

どうもこんばんは、サラダ坊主です。 数日間更新をサボっておりましたが、皆様いかが御過ごしでしょうか。 明日は台風の影響で大雨とのこと、御出勤される予定の方々はさぞかし気鬱でございましょう。私も気鬱です。 さて、今回のエントリーから数回にわたっ…