サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

2020-08-23から1日間の記事一覧

「Hopeless Case」 37

辰彦より一足先に会社を出ると、既に夕闇は濃かった。ビルの谷間を冷え切った疾風が鞘鳴りのように駆け抜け、滲んだ西日は何処か色褪せて見えた。椿はコートの襟許に顎を埋めて、上眼遣いに道路の対岸の信号機を見凝めた。都会の雑踏、という手垢に塗れた言…