サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

2018-01-12から1日間の記事一覧

詩作 「千年」

孤独が孤独であるためには 生傷が必要です 千年も生きれば どんな傷口にも慣れるでしょうが それでもやはり哀しいものです 愛するものが消えてしまう刹那の 薄暗い光の軌跡は 果てしない時空を隔てて 想いはいつまでも空回り 眠れぬ夜を抜けた先で 夜明けの…

詩作 「FATE」

声が聴こえない部屋で 黒い哀しみにおぼれていた 感傷は私たちの骨を着実に腐らせる 出逢うことと 別れることのあいだに 身を沈めて 私たちの生活は 冷たい波に洗われつづける あなたの古い写真 まぶしく輝く初夏の風景 心変わりを思い返す痛み せつなさ 運…

詩作 「SCORPIO」

毒針で刺すぞ 痛みは激しいぞ 動けなくなって 白骨になっちまうぞ 裏切りは許さないぞ 愛されるということは 感情の債務をしょいこむということだ お前は俺に借りがあるはずだ 借りたものはかならず返せと 親や世間から習ったはずだよな? お前のために俺は…

詩作 「INTIMACY」

部屋を選ぶ(画面だけでは差が分かりづらい) 値段を確かめる(休前日は値上がりする) 愛し合うために 長い夜の深みのなかで 互いの存在を確かめる 腕耳朶指先腋臍肌唇項涙髪性器陰毛 息苦しさも愛しさの一環だ 他の部屋でも同じ行為が営まれている 土曜日…

詩作 「公民の時間」

手を挙げる 性欲が高まる 教科書のページが風にめくれる あなたの肩のフリルが 夏の光のなかで揺れる 私たちの知らない世界は この道の先にたくさんある 手を伸ばす 呼吸が弾む あなたの唇が 滑らかにひらかれる 濡れた音をたてて さびしいから好きになるの…

詩作 「SOMEWHERE」

始まりはただ 秋の平凡な一日で 夕映えは ふだんと変わらぬ壮麗な茜色 坂道をくだる自転車の軋みが 二人の時間の 伴奏でした あのころ いわゆる青春と呼ばれる時代を過ぎたあとでも 働くことが日常のまんなかを貫くようになったあとでも 私たちはきっと 自由…

詩作 「そしてまた春が訪れる」

凍りつくような冬の風が 寝静まった車道を走りぬける 終わってしまった関係を いつまでも語り続けるのは愚かだと 酔った友人はグラス片手に諭す 終わりとは何か 始まりとは何か 永遠とは何か 壊れやすいこころで 生きていくためには何が必要か 春が来るまで …

詩作 「CERTAIN」

時間が流れ 季節が巡り 落ち葉のように記憶は積もり 絆はさまざまな場面で 伸び縮みを繰り返す 古い歌が聴こえれば 急に私たちは過去へ連れ去られる 時計の針が 逆行を始める 眩しかった風景が眼裏に 美しい彩色で再現される 何の役にも立たないはずの 過ぎ…