サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

詩作 「船出」

纜が静かにほどかれる

知らぬ間に

東の空の縁を

白く染めていく今日のひかり

船の帆がもうすぐ風をとらえる

貴方の心をとらえるように

 

世界はずっと暗い静寂のなかで

時を数えるばかりで

私たちはいつもこうして

冷え切った夜の揺籃に抱かれて

息を殺すように眠っているね

暁のひかりを

眼裏に探して

 

船が舳先を沖あいに向ける

様々な掟が貴方の心を縛るでしょう

指先をすりぬけていく風に怯えて

定まらない羅針盤の沈黙にふるえて

だけど何も懼れることはないよ

本当はこの海原に道はない

描かれた航跡だけが

その白いさざなみの行方だけが

この世界にあたえられた唯一の正しさなのだから

 

夜明けに気づいて

目覚めた二人

触れ合って

生きることの哀しさのなかで

埠頭から焼ける空を見上げる

暁のひかりのなか

冷たい潮風のなか

積荷は少ない方がいい

今にも白い大きな帆が

風をとらえるよ

そして滑り出すだろう

朝焼けの下で

新しく刻まれる一条の航跡

暁のひかりが導く運命

夜の深い懐で育まれた

一粒の真珠のような感情を抱いて