サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

詩作 「野晒し」

息を吐くたびに
罅割れるような音が聞こえる
この陰気な肺臓をかかえて
幾千里も歩きとおして
一体何を希っているのやら
最初に掲げた旗の色は何だったのか
それさえ忘却の淵に沈めてしまったあとで
漸く辿り着いた
砂埃の舞い立つ
寂れた街角

俺は俺自身の魂のありかを探していた
気の狂いそうな満月の夜に
霜柱を 音を立てて踏みこわして
俺は幽鬼のような表情で
この果てしない道程を踏破した
俺の魂と
俺の眼球は
冴え渡る月の光を浴びて
今まさに燃え上がろうとしている
あの北極星
白い光にさえ
焔の指先が届いてしまいそうだ

鎖を引きずる
暗い革靴の音
打たれた鋲の
目覚めるような尖端
俺は俺の心臓に耳を傾けている
真実の叫び声を
すくい取っている
俺の魂の音楽は
夜空を焦がす紅蓮の虹となって
この静まり返った曠野に
闇の滴りの如く響き渡る
俺には信じ難いものだけが見える
この二つの
繊弱な眼球の表面に映りこむ