詩作 「refrain」
もう逢うことはできない
二度と重なることはない
想いは
摩天楼の彼方へ吸い込まれ
夜は一散に更けてゆく
流れ星は必ず堕ちる
天頂から 地平線の不明確な稜線の向こうへ
わたしたちの束の間の
禁じられた逢瀬は
ほろびた
墓標を築くことさえ
許されぬままに
終末の音楽を
寡黙な楽隊が奏している
わたしたちの束の間の
愛しさの氾濫は堰き止められた
人知れず流れる
暗渠のような恋路
わたしたちは後悔も悲しみも届かない場所で
追想の時間をおくる
告別式のような
儀式的な静寂の裡に
想い出の輪郭が
冷えびえと光っている
わたしたちは逢うことを禁じられた
それは社会的な迫害の対象に選ばれた
春の雪が降りしきるように
幻のような白さのなかで
あなたの肌が燦然と艶めく
もう逢うことは許されない
あまりに短すぎた情熱の時間の涯で
射竦められたように立ち止まり
残骸と化した絆の
灰白色の表面を見つめる
わたしたちには運命が手を貸さなかった
それは不適切なタイミングで
この現実の地表に
突然変異の種子のように芽吹き
案の定
育つひまもなく刈り取られて焼き払われた
育ててはいけないものを
育てた罪は重く
光りの射し込まない牢獄で
切断された心の部品が呻き続けている
わたしたちの適切ではない関係の
固有の汚濁
視野はふさがれる
光りの射さない世界にも愛情は存在し得る