サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

詩作 「師走哀歌」

透明な暮らしのなかで

札束を計えるように

過ぎた時間を秤にのせる

身を切るような年の瀬の風が

私の魂に蓋をかぶせる

着信はもう待たない

メールを待ち侘びるのも止めた

なぜならそれは

愛することとは無関係だから

焦がれるように想うことは

愛することと似ているけれど違う

 

キリストの誕生日に

多くのホテルの窓に

息苦しい光が燈る

短命な蛍火のように

すぐに色褪せ朽ちていく恋心

アドレス帳には確かに残っているけれど

私はそれを開かない

私は屈辱や哀訴を望まない

地下鉄の蒸気が

孤独を香り立たせる

 

改札であなたを探す

行方知れずの郵便物のように

彷徨する魂の痕跡

いずれ眠れない夜が訪れるにしても

この瞬間の孤独から逃げようとは思わない

愛することは縛ることではない

愛することは想いつめたり見つめ合ったりすることでもない

同じ世界の

同じ空を仰ぎ見て

カシオペアの光のしたで

冬枯れの芝に寝転がること

同じ一つの孤独を分かち合うように

 

年が明けるころに

あなたに宛てて一通の手紙を送る

想いをこめることが

愛することと常に同義語である訳ではない

野蛮な執着を鮮やかに切り捨てる勇気を

私に与えて下さい

あなたを愛するためには

私はあなたを忘れなければならない

リアルな感情を

陸橋から河へ投げ捨てなければならない