サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

詩作 「ふたり暮らし」

空は青く晴れている

青葉が風に揺れている

遠い道を歩いてきた

あなたの笑顔が

細胞のなかに折り畳まれている

通いなれた駅までの道を

二人で歩き始める

季節が変わり

風は柔らかく吹き寄せる

あなたの苗字を

表札に加えよう

ふたりで暮らすこと

真昼のあふれる光のなかで

懐かしい夢を見ること

確かなものを見つけられない世界のまんなかで

確かなものを打ち立てようとする努力

 

一人で生きられないわけじゃない

澄み切った空の下で

光は平等に降り注ぐ

酸素は私たちの肉体を覆っている

それでも私たちは夢見てしまう

生きることの厳しさが烈風のように迫るので

伸ばした指先を

誰かと絡めずにはいられなくなる

それが偶然あなただったのだろうか

或いは

世界がひらかれた瞬間にプログラムされた

ひとつの必然だったのだろうか

 

愛することがいずれ

滅びの歌に帰結するとしても

この胸を咬む想いに

ナイフを突き立てるのは難しい

抱きしめて見つめ合うことの

息苦しいような喜びを知ってしまったら

今更帰り道は探せない

ふたりで暮らしましょうか

さりげない提案を積み重ねて

私たちはたった一つの道に向けて歩き出すのだ

虹が架かっている

終電は往ってしまった

あなたの柔らかい唇に

私の乾いた唇が恩寵のごとく接する