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サラダ坊主日記

「この味がいいね」と君が言ったのはお世辞だったねサラダ記念日

詩作

詩作 「帰り道」

秋は深まる 刻一刻 風のなかで冷えていくあなたの頬が 秋の光りに染められて 夕闇は冴え渡って 思わず手を伸ばす 芯から冷えた あなたの頬 子どものように 幼い唇 誰もいない公園に 夕陽が射す 無人のブランコが 木枯らしに揺れる 知らない間に ずいぶん遠く…

詩作 「世界の終わり」

地平線が 燃える 火柱を あげるように 夕陽が没する 壮麗な音楽のように 世界が騒ぎだす もうすぐ なにもかも終わってしまうよ なにもかも 更地に戻ってしまうよ わたしたちは 一斉に 耳をふさいだ 聞きたくない音をすべて 拒んできたわたしたちの 罪なので…

詩作 「クランベリー」

懐かしい歌が 窓辺から聞こえる 古びたラジオ 手入れの行き届いた庭 わたしは目を覚ます 朝が来る 幸福な記憶を 手帳のようにめくる 本棚に囲まれた明るい部屋 そこでは静寂だけが暮らしている 時を刻む音に 名前も知らない鳥の声がまじる わたしは歯を磨き …

詩作 「他人の財産」

触れてしまえば 罪になる その危うい境界線を見定める あなたが不意に 翳らせた横顔 その憂いに 指で触れてしまいそう あなたが帰る部屋は 寒空の下で あたたかく燃えている 月明かりは電柱を照らし 走り去るタクシーのヘッドライトが 束の間 真実を暴くよう…

詩作 「刺青と口紅」

あなたの顔に 刺青を彫りたい どう足掻いても 消えないように 洗っても擦っても 落ちないように 想いが 痣のようにいつまでも 残りつづけることを 願う針先 破れた皮膚の 裂け目のように あなたの嘘を 彩る口紅 真実から 見捨てられた言葉で 駆け引きにおぼ…

詩作 「高速道路」

宙に浮いた オレンジの灯りが 連なる夜の風景 すばらしい速度で 無理にさらってしまうみたいに タイヤが軋む あなたの寝顔が 鋭いオレンジの 光の刃に 傷つけられる それでも昏々と 眠りつづける 胎児のような 表情はゆるがない 江戸橋 汐留 浜崎橋 一ノ橋 …

詩作 「蛍火」

静かにしてください すぐに逃げてしまうから 水路のなかから聞こえる 清らかな音のつらなり 宵の口の 物哀しい調べ あなたのサンダルが立てる音 わたしの団扇が風を裂く音 晩夏の 取り残されたような みじかい休暇 若いあなたは 傷を知らない 流れる血の 重…

詩作 「永遠とよばれた午後」

永遠に続く 夏の日盛りの石段 蝉しぐれは なまぬるい風とともに ゆっくりと道の上を渡っていく あなたの暮らす家は 夏の町並に うずもれている 麦わら帽に 虹色のリボンを結わえた少女が 坂道を自転車で下っていく 開け放たれた縁側から この夏の猛暑を嘆く …

詩作 「霊園」

怖がりは なおらない 昔から夜の闇に たやすく怯えた横顔 あなたは蝋燭の焔の 揺めきを見つめる 死んだ人たちはもう帰らない わかっていると あなたは言う 月明かりが 墓標を静かに照らす 失ったものは もう二度と わたしたちの世界には戻らない 一瞬の愛し…

詩作 「除籍謄本」

去りぎわに 振り返る この世界には 知らぬ間に 手遅れになってしまうものが多すぎる 消印のついた古い葉書 あなたの名が書類から除かれる つないだ手が ほどかれるように 悲しみは 冷めていく この夕暮れ時 気がつけば あの頃の苦しみは 古井戸のように涸れ…

詩作 「居心地」

そりゃあ重要ですよ 居心地は 家具屋の店員みたいに 男は言った 去っていった女の 猫背のシルエットが 眼裏で笑いさざめく 居心地が悪くて 家を出た女の 行方を尋ねる気力は もうどこにも残っていない 居心地を良くするための努力を あなたは怠っていたんで…

詩作 「さよなら、渚」

潮風が遠くから 帆を立てて近づいてくる 砂浜に白く煙る複数形の記憶、男女 波打ち際の静かな日かげで 手を振りました けんめいに もう最後だし 夏は 急速に終わりを迎える 陽炎がアスファルトに揺れて 買ったばかりのアイスキャンディが 汗ばんで溶けて 水…

詩作 「わかれる」

爪を立てて 引っ掻いたように いつまでも消えない幾つかの傷 血の滲む 夕映えの空の下 わたしもあなたも暮れていく道の上に佇んでいました 影法師が長くのびていく その音が聞こえそうで 耳を澄ましてみたら あなたの心は 別れることしか望んでいなかった さ…

詩作 「すべて壊れてしまいました」

すべて壊れて しまいました 嘗て確かにそこにあると信じられたものたち ときを選ばず 息衝いていた様々な感情の雫が 知らぬ間に乾き切っていました あなたの笑顔の写真が ひび割れ 古びていきます 時の暴力に わたしもあなたも逆らえない 時計の針が ゆっく…

詩作 「あなたが」

あなたが遠くを眺めるとき 青い焔のような海が揺れる あなたが瞼を閉ざすとき 紅い夕闇が静かに迫る あなたが声を立てて笑うとき 強張っていた世界が溶ける あなたが怒りに身を任すとき 張り巡らされた嘘が 焼け落ちる あなたが眠れぬ夜を過ごすとき わたし…